EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

Compact

真・MFC千夜一夜物語 第371話 ダウンサイジングこそ技術革新の証です その8

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC、MFMとMFCをマスフローと総称。) のダウンサイジングに関しての解説の最終章です。

MFCが出現して以来、そのダウンサイジングへの要求は絶えず、それに対する開発は色々と寄り道を強いられながらも、続いてきました。
その道は半導体製造装置向けというMFCのメインマーケットとそれ以外の一般産業用途では大きく異なる道に分岐しきました。
1990年代後半の熱式流量センサーのMEMS化が一つの大きな転換点でしたが、半導体プロセスで使用される腐食性ガスに対して、ヒーター、熱電対部を直接さらすMEMS方式はNGという判断が下されたのに対して、一般工業向け特に装置が小型でフットプリントへの要求が厳しい分析装置向けではブロンコストのIQ+FLOWといた今までのMFCの概念を打ち破るような製品が出現して、今に至っています。

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【IQ+FLOW マニホルドタイプ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】
MFCのメインマーケットであった半導体製造装置産業では、画期的なダウンサイジングに至るのは2020年代の圧力式流量検出方式を搭載した10mmMFCまで待つ必要がありました。

その間にブロンコストは更にこの小型MFC分野を追求し、サイズ的にはIQ+FLOWよりは大きいのですが、その分流量レンジや仕様圧力を拡大したFLEXI-FLOW Compactという新世代の流量センサーであるTCS(Trough Chip Sensor)Technology バイパスフローセンサーを搭載したモデルをこの春に発表しています。

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【EL-FLOW vs FLEXI-FLOW Compact 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】
今後、MFCのダウンサイジングはどの方向へ行くのか?
Decoはもう一つの解として全量測定できる流量センサーであるコリオリ式流量センサーのMEMSタイプにも、その解があるのではないかと考えています。
従来のMEMS、ブロンコストの開発したチューブタイプのTCS Technology バイパスフローセンサー、半導体向けの圧力式流量センサー、これらの更なる進化の兆候が見られたら、その都度ブログで解説していきますね!

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第368話 ダウンサイジングこそ技術革新の証です その5

 マスフローメーター(MFMマスフローコントローラー(MFCMFMMFCをマスフローと総称。) ダウンサイジングの歴史に関して解説していきましょう。
今回からは、現在進行形で進んでいるマスフローのダウンサイジング技術に関する解説を行いましょう。


ここでは大きく分析装置のような一般産業向けと半導体製造装置向けに分けて話を進めます。
これは半導体製造装置向けとその他の用途装置では、マスフローに対する要求事項が大きく異なるからです。
具体的に言えば、ダウンサイジングに最も有効である熱式流量センサーのMEMS (Micro Electro Mechanical Systems)が受け入れられるか?です。
従来型の巻線タイプとMEMSタイプの構造比較を下図で見てみましょう。

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巻線型は層流素子(バイパス)と組み合わせた全体像は下図のような形となります。

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ほとんどの巻線型はセンサーの内径が1mmΦ以下のステンレスチューブでできています。
そこに流せる流量は510SCCM程度で、残りは全てバイパス側に流さなくてはいけません。
例えば5000SCCMなら49954990SCCMを流せるスペースを確保しないといけないという事なのです

MEMSタイプと同じ流量レンジで比較すると、ダウンサイジングという要求に対して不利な構造であるのがわかります。

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巻線型とMEMS型MFC 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

MEMS型も流量に応じて当然バイパスは必要になりますが、直接流体に触れる分、MEMES型はセンサー感度が良いので、センサーとバイパス分流比を巻線型のそれより小さく設定できる利点があります。
それは同じ流量レンジで比較するとバイパス部を小型化できるという点でダウンサイジング技術を進めるうえでは生きてくるのです。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第367話 ダウンサイジングこそ技術革新の証です その4

 マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC、MFMとMFCをマスフローと総称。) のダウンサイジングの歴史に関して解説していきましょう。

106mmコンパクトMFCという存在は、その後のIGS(Integrated Gas System)の時代に大きな影響を及ぼします。
300mmウエハー対応半導体製造装置のガス供給系では、IGS対応のMFCが採用されました。 
IGS対応MFCでは、従来の面間寸法に似た規格としてポート間寸法(ピッチ)が存在します。
IGS対応機器はダウンポートと言って、機器の底面に流体の入口出口があります。
このポート間の距離が92mmと79.8mmという異なるピッチの二つの規格が存在してしまったのです。
簡単に言えば、スタンダードサイズ(面間124mm)のMFCをベースにしたものが92mm、コンパクトMFC(106mm)をベースにしたのが79.8mmになったのです。
そして、スタンダードサイズが米国の装置メーカー、コンパクトサイズが日本という海を越えた二つの規格として存在してしまったのでした。

IGS対応MFCにはもう一つの規格があります。
MFCの奥行方向の寸法です。
これは本来IGSが1.5インチもしくは1.125インチスクエアな正方形を底面形状とした機器を組み合わせるモジュールだからです。
そもそもMFCだけはその正方形サイズに収まらない為、横長な長方形の底面形状となっています。
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IGSでは更にもう一つのシール形状の規格があります。
WシールとかCシールといった名称のものです。
このシール形状が異なれば、ピッチや奥行き寸法が合っていても接続することができないので要注意です。
WシールとかCシールというシールの規格に応じてMFCの底面接続部の加工形状そのものが異なるので、シール材だけを変えたら接続できる訳ではないので注意して下さいね!

IGS対応MFCを技術面で考察すると、面間寸法、そして奥行方向での寸法を小型化するべく努力がされているのがわかります。
特に79.8mmピッチは106mmMFCでの日本のMFCメーカーの苦労が活かされています。
また、1.125インチの奥行き寸法に合ったMFCを作り上げる為に、米国MFCメーカーもソレノイドアクチュエーターやバルブの構造を大きく見直す機会となったのが見て取れます。
何よりDecoが進化と捉えているのは、スタンダードとコンパクトだけでなく、複数存在するIGSやシール方式に合わせてMFCの入口、出口側フランジをモジュール化する事で、オーダーに応じたMFCを組み上げる事を可能にするという、いわば“作りやすいMFC”が現れたことです。
堀場エステック(株)Z500シリーズブルックスGF100シリーズは大量生産を踏まえた上でフレキシブルに仕様対応も可能で、PI(Pressure Insensitive)等の新技術への拡張性もある現世代MFCの傑作シリーズと言えるでしょう。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第366話 ダウンサイジングこそ技術革新の証です その3

マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC、MFMとMFCをマスフローと総称。)ダウンサイジングの歴史に関して解説していきましょう。

1990年代後半、半導体プロセスガス流量制御を行う5SLM以下の流量レンジのMFCでダウンサイジングの動きが生じます。
これは従来の1/4”VCR(フェイスシール)タイプ継手を用いるMFCで、面間寸法124mmから脱却して106mmという面間を新たに訴えるものでした。(下図)

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90年代後半から2000年代にかけて106mmコンパクトサイズと呼称されたMFCの事です。
ピエゾアクチュエーターでMFCを作ってきた国内メーカーの方が開発で先んじました。
ソレノイドアクチュエータータイプは、そのフットプリントが大きかったので開発に苦労したとも言われていますが、そもそも海外のMFCメーカーはこの日本発のコンパクト規格には無関心でした。
おそらく当時からMFCの需要先として世界最大の半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルが関心を持たなかったためでしょうね。

確かに124mmと106mmの差は18mmです。
これを画期的なダウンサイジングと捉えるか、否か?は難しいところでした。
大は小を兼ねるというが、その逆は難しいですね?
106mmのコンパクトMFCの継手を延長して124mmにすることはできるが、その逆はできません。
MFCは決して単体で用いられる機器ではありません。
バルブ、レギュレーター等と組み合わせてガスシステムを構築して使用されます。
その中でわずか18mmのダウンサイジングを実現する事のメリットと、106mmを採用してサービスパーツとして二種類のMFCをガス種流量毎に用意する事のデメリットを比較して評価した可能性は高いかと思います。
今ではこの106mmコンパクトサイズMFCはマスフローの歴史に消えていった存在となってしまいました。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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