EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

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年末年始休暇のご案内

EZ-Japanは、2023年12月29日(金)午後より1月8日(月)まで、年末年始休暇とさせていただきます。
それに伴い次回のEZ-Japan BLOG更新は、年明け1/9日(火)の更新からとなります。

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本年も大変お世話になりました。
気が付けば2014年に創業したEZ-Japanも10年です。
今年はWeb-MTG(ウェブ・ミーティング)だけでなく直接お客様にお目にかかる機会も増え、
MFC業界自体は昨年の反動と半導体投資の手控えで落ち込みもあったようですが、
お陰様で過去最高であった昨年度に迫る業績で締められそうです。
また、MFC千夜一夜物語のハングル版を始める事が出来たのも大きな試みでした。
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日本だけでなく、韓国のお客様にもMFCのお話をお届けできるようになったのは大変喜ばしいと思っております。

これも皆様方のご支援や家族の支えのお陰です。
ありがとうございました。

2024年もEZ-Japanと黒田 誠(Deco)を宜しくお願い申し上げます!

EZ-Japan 代表 黒田 誠(Deco)
  

プロセス圧力コントローラー P-800シリーズ その2

APC(Automatic Pressure Controller)には背圧制御型と供給圧制御型が存在しています。
この2種を融合したのが、今回ご紹介するブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)EL-PRESS/IN-PRESSP-800シリーズです。
P800
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

今回はこの面白いAPCを具体的に紹介していきます。
ブロンコストは供給圧制御型APC P-600、背圧制御型APC P-700で多くの実績を有しているメーカーです。
最大圧力400barまでと日本製APCとは比較にならない高圧領域で確実な動作を行える唯一の存在であり、各種工業プロセスで活躍しています。
流量制御だけではなく、圧力制御も社業の一つとしているブロンコストからの提案されたAPCの新しい形がこのP-800シリーズです。
一見すると、MFCタイプのボディにバルブと思わしきものが二つ付いている不思議な形状ですが、そのフロー図は下図になります。

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ガスの入口にソレノイドの比例制御弁1があり、その下流に圧力センサーがあります。
この配置は供給圧制御型APCそのものです。
だが、大きく異なるのは圧力センサーの手前に分岐があり、そこから排気側へのパスが設けられている事だです。
そしてここにもう一つ比例電磁弁2が設けられています。
このモデルの異形さの原因であるボディ横に2つ配置されているバルブはこの2つの比例制御弁です。
これらは元々MFCやAPCで用いられる流量制御バルブと同じ構造のものです。

 では、実際の圧力制御で、これらはどのような動きをするのでしょうか?
P-800を使用するに当たって、特別変わった操作は必要ありません。
ユーザーはP-800の下流に設置するチャンバー内の圧力に関して希望する設定値を入力して、P-800に任せておけばよいのです。
まずガスを導入してチャンバーの圧力を上げていく際、P-800は下図左のような制御を行います。

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比例電磁弁1を開度調整し、比例電磁弁2は閉止します。
そうするとP-800は供給圧制御型APCとして圧力センサーで感知した下流の圧力測定値(P.V.)と設定入力された目標値(S.V.)を比較して、比例制御弁1の開度を自動制御します。

次に何らかの理由でチャンバー圧を下げたい場合は、P-800は図の右のように圧力を下げる動作を行います。
まず比例制御弁1を閉じてガスの供給を絶ち、今度は排気側の比例制御弁2を開度調整し始めるのです。
このモードでのP-800は、今度は背圧制御型APCとして圧力センサーで感知した下流の圧力測定値(P.V.)と設定入力された目標値(S.V.)が一致するように比例制御弁2の開度を自動制御しています。
圧力センサーは共通で、二つの比例制御弁で供給側と排気側の流量制御を必要に応じて使い分ける仕組みなのですね。

Decoもこのアイデアには驚かされました。
なかなか柔軟かつ、面白い発想ですね。
この二つのソレノイドを使った比例制御バルブの制御は口で言うほど簡単ではない筈です。
バルブ切り替えだけではなく、二つの制御弁の特性やKv値に応じた制御アルゴリズムの設定はかなり高度なものになると思います。
ブリード弁やリリーフ弁を不要としたことでチャンバー周りの部品点数を削減できますし、モジュール化したことで省配線にも大きな効果があります。
また、高価なガスや危険なガスを大気に開放することなく回収することも可能になるという利点も備えています。
ちなみにP-800シリーズの制御圧力レンジの最大はP-822CV/CIの10~200barとなっています。

興味を持たれた方は、EZ-Japan Decoまでお問合せ下さい。
 
ここでもう一押し by EZ-Japan Deco

プロセス圧力コントローラー P-800シリーズ その1

APC(Automatic Pressure Controller)には背圧制御型と供給圧制御型が存在しています。
ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)にはEL-PRESS/IN-PRESSシリーズで、供給圧制御型APCの P-600シリーズ、背圧制御型の P-700シリーズがあり、今までも数多くの実績があります。

IN-PRESS
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
ただ、残念ながらAPCには一つの大きな弱点があります。
それはこのタイプのMFCの構造を流用したAPCが「流体の圧力を測定し、予め設定された圧力値になるように制御バルブで流量を制御し、その制御した流量を送り込む、もしくは引き出す事で、結果として圧力を制御する」という特性の製品だからです。
つまりこの種のAPCは圧力をダイレクトに変化させている訳ではなく、背圧制御型ならば吐き出す、そして供給圧制御型なら送り込む流量を可変する事で結果として対象となるチャンバー等の圧力を変動させているのです。

もし入口のみで出口がない容器、つまり袋小路のワークであった場合、APCから送り込まれた流量が過大であった場合、封入された圧力は設定圧力を超えて、二度と下げる事は出来なくなってしまいます。
その為、一般的にはポンプ等で積極的にチャンバーを排気するプロセスもあれば、若干与圧に保つべく機械的な絞りを設けた排気系を設けるようないわゆる出口を用意する事になります。
ここで供給圧制御型P-600と背圧制御型のP-700でチャンバーを挟んで対峙させる構造にしないのは、双方の圧力制御が干渉しないように双方の制御定数をセッティングしなくてはいけません。
 
こういったAPCの持つジレンマを解消し、供給圧制御と背圧制御を両立させて常にプロセスチャンバーを設定した圧力で安定させる新しいAPCが、ブロンコストが開発したプロセス圧力コントローラーP-800シリーズなのです。
 P800
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

なにやら今までのMFCやAPCとは異なる不思議な形をしていますね?
このプロセス圧力コントローラー P-800シリーズ
詳細は次回お話ししましょう。

ここでもう一押し by EZ-Japan Deco

EZ-Japan 2023年夏季休暇のお知らせ

酷暑に見舞われた今年の夏ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

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さて、EZ-Japanは、以下の日程で夏季休暇を頂きます。

2023年8月11日(金)~20(日)

休暇期間中は、EZ-Japan BLOGもお休みさせて頂きますので8/15(火)の更新はございません。

宜しくお願い申し上げます。

EZ-Japan 代表 黒田 誠

真・MFC千夜一夜物語 第386話 流量制御バルブとアクチュエーター その6

2023年始まって初めての真・MFC千夜一夜物語となります。
マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関して再び解説していきましょう。
では、ピエゾアクチュエーターの真に優れた特性は何でしょうか?

それはやはりなのです。
ピエゾとソレノイドを比較すると、ピエゾは、ある電圧をかけることでで、結晶構造体が変位する(=逆圧電効果)性質を持ちます。
つまり「固体の変形」により「伸び縮み」するのです。
それに対してソレノイドは、電磁石の「磁界の強弱」でバルブプランジャー(可動鉄芯)を「動かす」のであり、しかもMFCの流量制御バルブの場合、開閉のどちらでもない中間点で「止め」なくてはなりません。
どこまで伸ばしても、あくまで固体であるピエゾと、磁界の中でプランジャーを浮かせて移動しているソレノイドでは、当然バルブに対して働く力には大きな差が出てしまいます。
(もちろんソレノイドが浮いていると言っても、板バネで磁力の向きと反対方向へ固定はされています。)

そしてもう一つが分解能です。
ピエゾはそもそも微少な変位量しかないのが特徴であり短所でした。
逆に言えば、微少な変位をするのは得意なのです。
それ故、精密にバルブ開度を調整できる分解能の分野でも、ピエゾはソレノイドには勝ります。

力があって、なおかつ精密な動きが得意なアクチュエーターであるピエゾをMFCで使うことの真の意味は、MFCのバルブを構成する上で大きなメリットになるメタルダイヤフラムバルブを形成できることです。
 
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このバルブ構造は、多種多様な腐食性、可燃性、毒性ガスを使用しなくてはいけない半導体プロセスガスには欠かせない構造です。
接ガス部を最小のボリュームにすることで、生成物による詰まり等の故障や外部リーク事故のリスクを減らすだけではなく、パージによるガス置換に要する時間もそれだけ早くなり、ターンアラウンドタイム(TAT)の短縮による、無駄の少ないプロセスを作り上げることができるのです。

MFCの流量制御バルブは流量センサーの出力と、設定流量信号入力が一致するように、バルブの開度制御を行うので、常にバルブは開度を細かく変化させています。
そういった流量調整機能には柔軟さが必要だが、対腐食性を考慮すると、樹脂製ダイヤフラムは使用できず、やはり金属製、それもSUS316L等の耐腐食性を持つ材料を使用したいのです。
しかし、そういったメタルダイヤフラムは、一様に堅い。
それを強い力で変位させ、維持し続け、更に常に外部条件(温度・圧力変動)や設定流量の変化に合わせ精密に開度を変える必要がありました。
ピエゾアクチュエーターは、こういったメタルダイヤフラムにうってつけのアクチュエーターだったのです。
SUS316Lより更によりしなやかさで、飛び移り座屈性能(スナップスルー)の良い材料として、日立金属(株)(現:(株)プロテリアル)が自社材料であるNi-Co合金ダイヤフラムYET101を使用した波形ダイヤフラム搭載MFCを開発したことで、ダイヤフラムに「分離目的とともに、可動しバネ役割をはたす」機能を実現しました。
ダイヤフラムがバネの機能を持つと言うことは、接ガス部にスプリングのような摺動部を置く必要が無くなり、パーティクル発生や、ガスの吸着が少ないシンプルバルブ構造を実現できたのです。
このことにより半導体プロセスガス用MFCのバルブは大きく進歩しました。
ピエゾアクチュエーター+メタルダイヤフラムバルブという組み合わせは、現在でも揺るがないほどエポックメイキングなものだったのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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