EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

IP65

真・MFC千夜一夜物語 第392話 寒いですね。寒い日のMFCは・・・その4


寒い冬場のMFCマスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)の選定、設置に関する注意事項のお話です。
ここでやっとMFCの周囲にある「MFCよりも更に冷え切っているもの」のお話をしましょう。
389話から引っ張りましたが、されそれは何でしょう?

それはマスフローに流れる流体(ガス)なのです。
マスフローは前回解説したように温度補正を行っています。
これはセンサーに流れる流体の温度を正確に捉えさえすれば正常に働くという意味です。
逆に言えば、この補正のベースとなる流体の温度を正確に測れていなかったら、前回お見せしたモデルにはならず、補正した結果は大変怪しくなってしまいます。
ここで問題になるのは、マスフローはこの補正情報の元になる流体の温度をどこで測定しているかです。
実は大部分のマスフローは流体の温度を直接測定せず、マスフローのボディや基板上の温度を測定しています。
つまり、流体温度=マスフローの環境温度が前提なのです。
これらに大きな差があった場合、間違った温度情報による補正がかかることになってしまいます。

「それなら温度センサーを流路内に設置して、直絶ガス温度を測って補正情報を得ればよいのではないのか?」と意見もあるでしょうが、流体によっては腐食や反応物の堆積などで正確な温度が測れない可能性がある事を考慮しなくてはいけません。
マスフローの主用途である半導体プロセスガスには、特に腐食性ガスが多いのです。
間接接触での測定は、感度の上で適切なものがなく、感度を得るためには温度センサーを取り付ける接ガス材質をステンレスよりも熱伝導率の良い材質に変更せねばならず、これもまた半導体プロセスでは問題になる可能性があります。

こういった理由でやむなくMFCの周辺環境温度を温度補正に使っているのです。
実際にDecoが経験した事例ですが、MFCにガスを供給している配管に空調が冷気を直接吹き付けていたことでMFCへ過度に冷却されたガスが入り、周囲温度と流体温度との差が大きくなって、温度補正が適切に行われず、流量異常を起こしてしまったことがあります。
寒冷地の屋外では、この問題はさらに深刻です。
なぜならマスフローにガスを供給するガスボンベの設置は、ほとんどの場合、空調の無い屋外環境だからです。
前空調の吹き出しからの冷気程度ならば、吹き出し口の向きを変えるか、空調の風が当たる配管に断熱材を巻くような処置で対応できますが、ボンベそのものから冷えたガスが入ってくる場合は、それほど簡単ではありません。
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どうすればこういった問題を解決できるでしょうか?
ガス温度を直接測って、温度補正できるマスフローが開発されない限り、当面は配管施工、マスフローの運用で解決するしかありません。
屋外で空調の無い場所で設置するのだから、あえて屋外のボンベ庫に隣接して耐候型マスフローを設置する事で、同じ温度環境にしてしまうのも手です。
もしくはガスラインがマスフローの設置してあるエリアに入る時点で配管ラインを長く取って温度をなじませるような仕組みを設けるべきですね。
熱交換器というか、スパイラルに巻いた配管でいいので設置してみると効果が出る場合もあります。
いずれにしても「マスフローの周囲温度と流れてくるガス温をほぼ同じにして使わないといけない」という、マスフロー最大の弱点を認識して配管を施工して頂けるとありがたいです。
 
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第391話 寒いですね。寒い日のMFCは・・・その3

寒い冬場の屋外用MFCマスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)の選定、設置に関する注意事項のお話です。
前回、「屋外でも屋根や壁があってマスフローは風雨に直接さらされません。ならばIP40のMFCで大丈夫ですよね?」という顧客からの問いかけに、どうDecoは答えたでしょうか?

実は耐候性能を持つマスフローの作りの堅牢さは、伊達ではありません。
IP65仕様のマスフローのケースを見ると、非常に重厚な作りであり、更に隙間にはシールが施されています。
これは防塵防水だけでなく、冷たい外気からもマスフローの電気回路をしっかり保護してくれるという利点があるのです。
Decoは屋外もしくは屋外に準じる環境で使用される顧客にはその点を強く推しています。
先ほど質問への回答も「防塵防水だけでなく、環境温度変化に対するセンサーと電子部品保護という観点で耐候型IP65タイプマスフローをお薦めします。」と説明しました。

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IP65耐候仕様MFM 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

同じような質問で「MFCの温度補償範囲を超えてしまっても動作はしますよね?」という質問に直面した事もあります。
ここでマスフローの熱式流量センサーの特性を解説させて頂きます。
熱の移動を捉えてそれを質量流量へ変換するセンサーならば、温度変化という外界の熱環境の変化の影響を受けないはずはありません。
マスフローのセンサー温度とマスフローを通過する流体温度とのモデルで説明します。
(このモデルは特定のメーカーのセンサー方式を説明したものではなく、概念説明のために簡略化や、数値を都合良く加工している事を予めお断りしておきます。)

マスフローの熱式流量センサーに仮に100℃に加熱したヒーターがあったとしましょう。
この流量センサーに100℃の流体が触れても同温だから、当然熱移動は起きません。
つまり100℃の流量センサーに100℃の流体を流しても、そのマスフローからの流量出力は0になりますね?
今度はそこに0℃の流体を流してみます。
温度差は100℃あるから、大きな流量出力となるはずです。
この架空のマスフローセンサーの温度特性は、0℃を100%としたとき、-1%/℃の傾きで温度による影響受けると表現できます。
10℃流体温度が上がるだけで、流量センサーの出力は-10%になりますから・・・このままでは当然質量流量計を名乗ることはできません。

そこで温度補正というセンサーの生出力に対する補正を入れることで、実用性を加味してみましょう。
常温域、25℃をセンターとしたマスフローで一般的な使用温度範囲に補正をかけると、下図のようなモデルになります。

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簡単に言えば、25℃より低い温度では、センサー出力を下げる補正を、逆にそれより高い温度では上げる補正をかけているのです。
このモデルで示す平坦化した範囲が、精度保証温度範囲 25℃±10℃ というスペックの部分なのです。
つまり温度範囲を少し逸脱して使用してもマスフローは異状なく動作はしているように見えても、測定値が実流量を現しているかは疑問であり、境界を越えた直後は誤差がその分大きく出てしまう可能性すらあるという事なのです。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第390話 寒いですね。寒い日のMFCは・・・その2

寒い冬場のMFCマスフローコントローラー)やMFM(マスフローメーター)は熱式センサーの暖機運転を念入りにというお話です。
そして周囲にあってMFC以上に冷え切ったものが何なのかという話は、もう少し後で触れますね。(じらしますね・・・)

最近あったお話なのですが、「MFCを屋外に置くけど大丈夫か?」という問い合わせがありました。
Decoは屋外でしたらIP65タイプのブロンコスト製品お勧めしています。
ここで復習です。
IP65とは何でしょうか?
防塵防水規格の規格でしたね?
JIS(日本工業規格) 電気機械器具の外郭による保護等級(JIS C 0920)及びIEC(国際電気標準会議) エンクロージャによる保護等級(Degrees of protection provided by enclosures (IP Code)/IEC 60529)で定めるところの規格で「IPコード(Ingress Protection)」と呼称されています。
このIPコードで数字の十の位は、人体、及び固体に対する保護等級(外来固形物いわゆる防塵)、一の位が水の浸入に対する保護等級(防水)で、以下の等級に分類されています。
故に防水のみを表す保護等級のみの場合はIPX5といった表記をします。
 
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国内のMFCやMFMの場合、ほとんどがこの防塵防水規格とは無縁で、屋内の清浄な場所で使用するのが前提ですが、ブロンコストには2種のIP規格のガス用製品があります。
この2種の差は、ケースと電気配線コネクターを見て頂ければ、すぐわかります。
通常のケースにDsub9ピンコネクターのEL-FLOW、ケースにもシーリングがされていて、DIN8の丸型コネクターで物々しいのがIN-FLOW等のインダストリー向けです。
 IP65というのは、“あらゆる粉塵の侵入に対して完全に防護“され、なおかつ”あらゆる方向からの噴流水による有害な影響が無い“という意味だとご理解ください。
IP40は、それに対して“直径1.0mm以上の固形物の侵入からの保護”はされているが、“水の侵入には保護なし”ということで、両者の間には防塵防水能力に置いて大きな差があることがわかります。
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IP40対応MFMとIP65対応MFM 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

ところがDecoのお勧めを聞いて、そのお客様はこうおっしゃったのです。
「大丈夫です。屋外でも屋根や壁があってマスフローは風雨に直接さらされません。
なのでIP40のMFCで大丈夫ですよね?」
さて、どうDecoは答えたでしょうか?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

防塵防水規格って何でしょう?

防塵防水規格とは、JIS(日本工業規格) 電気機械器具の外郭による保護等級(JIS C 0920)及びIEC(国際電気標準会議) エンクロージャによる保護等級(Degrees of protection provided by enclosures (IP Code)/IEC 60529)で定めるところの規格で「IPコード(Ingress Protection)」と呼称されています。


このIPコードで数字の十の位は、人体、及び固体に対する保護等級(外来固形物いわゆる防塵)、一の位が水の浸入に対する保護等級(防水)で、以下の等級に分類されています。


*防水のみを表す保護等級のみの場合はIPX5といった表記をします。

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マスフローメーター(MFM)マスフローコントローラー(MFC)の場合、ほとんどがこの防塵防水規格とは無縁で、屋内の清浄な場所で使用するのが前提です。


例外的にブロンコスト・ジャパン(株)の熱式のIN-FLOWシリーズMASS-STREAMシリーズ、そしてコリオリ式のCORI-FLOWシリーズ(ML-120シリーズ除く)は、IP65に対応したタフな工業用途向けの製品です。
ちなみに熱式の
ラボ用途向けのEL-FLOWシリーズはIP40です。

 

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IP40のEL-FLOW シリーズとIP65のIN-FLOWシリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

 

この2種の差は、ケースと電気配線コネクターを見て頂ければ、すぐわかります。
通常のケースにDsub9ピンコネクターのEL-FLOW、ケースにもシーリングがされていて、DIN8の丸型コネクターで物々しいのがIN-FLOW等のインダストリー向けです。

 

IP65というのは、あらゆる粉塵の侵入に対して完全に防護され、なおかつあらゆる方向からの噴流水による有害な影響が無いという意味だとご理解ください。

IP40は、それに対して直径1.0mm以上の固形物の侵入からの保護はされているが、水の侵入には保護なしということで、両者の間には防塵防水能力に置いて大きな差があることがわかります。

ただ、よく勘違いされるのですが、保護等級IP65の製品は水没状態で使用する事はできません。

”一時的に一定水圧の条件に水没しても内部に浸水する事が無い”という仕様はIPX7になります。
ブロンコスト製品で対応しているのは、超音波流量計であるES-FLOWのみでIP67になります。

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IP67のES-FLOW シリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

勘違いして、高価なMFMやMFCを水没させて、使い物にならなくしてしまわないでくださいね。

【MFC豆知識】 
by Deco EZ-Japan



 

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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