EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

MEMS

真・MFC千夜一夜物語 第431話 MFCの歴史を振り返ろう その7

マスフローコントローラ(以下MFC)の歴史に関して振り返っています。
DecoがMFCメーカーから離れ、一介のコンサルタント、エヴァンジェリストとして過ごして10年になります。
これを期にMFCという不思議な工業製品の技術動向をその歴史を俯瞰しながらまとめて行きたいと思います。
今回は.熱式流量センサー MEMS型のお話です。

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熱式流量センサーのMEMS型は、流体に直接センサーを接触させる方式です。(上図)
その為、流体との熱のやりとりという側面では、インサーションタイプと同様非常に効率が良く、応答性能では巻線式を圧倒します。
当然感度も良いので、SN比でも優れた特性を発揮するセンサーもあり、通常の巻線式ではターンダウンレシオ1:50程度なのを10倍以上の値をカタログスペックとしているメーカーもあるくらいです。
後発で1990年代後半から2000年代に市場へ導入されただけあって、デジタル制御技術の恩恵を被り、非常に優れた性能を発揮するものが多いです。
ただ、勘違いしてはいけないのは、MEMSというのはあくまでアナログのヒーター、測温抵抗体を小型にして半導体チップに実装できるようにしたものであり、アナログデバイスである事では他の2方式と変わりはないという事です。
その後段で信号をいかにロスが少なくデジタル化して用いるかで、MEMSタイプの性能には雲泥の差が産まれます。
目安程度の流量センサーや、フロースイッチ的な用途にとどまるものから、本格的な流量測定用途の流量計まで、種々の“MEMS流量センサー“と名乗る製品が市場にはあふれているので要注意です。
MEMS型の弱点は、ガスに直接触れるという利点の裏返しで、使用できる流体種に制限があることです。
腐食性流体はもちろん、図にあるダイヤフラム構造上、その直下の空間に残留するとまずい毒性ガス、バリア膜で用いているSi系の膜と反応する流体にも使用は難しいのです。
また、MEMSセンサーを固定する樹脂材料は、そこからのアウトガスを気にする分析用途では使用が難しいこともあります。
また、MEMS型といっても、分流構造とは無縁ではありません。
巻線型ほどの分流比ではないにしても、流量レンジによっては分流構造を持たねばならないものが多く、それらは前項で触れた異物混入による分流比異常の問題が付きまとうし、MEMSセンサーそのものに異物が付着した場合のトラブルも考えられるのです。
 
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan



真・MFC千夜一夜物語 第421話 MFCの応答性能 その3

2024年、あけましておめでとうございます。
本年も本BLOGを宜しくお願いいたします。
年明けから令和6年能登半島地震、そして羽田の航空機事故と続きました。
犠牲になられた方々、そのご家族にお悔やみ申しげますとともに、
被災された方々が一日でも早く元の生活に戻れるよう祈っております。
わずかな金額ですが、EZ-Japanからも被災地への寄付をさせて頂きました。


さて、2024年もMFC千夜一夜物語を始めさせていただきます。
章を改めて巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して早くはない理由のお話です。
流体に直接接触するMEMS型は感度が良く応答が速いというお話をしました。では、なぜ、MFCのメイン市場である半導体製造装置ではあまり用いられないのでしょうか?

それは“直接流体に接触する”というMEMS型の利点が、半導体製造プロセスで使用されるガスでは仇になってしまう事があるからなのです。
MEMS型の代表的な構造を見てみましょう。
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上図にあるようにMEMS型の場合、流量センサーを構成するマイクロヒーターとその上流下流の測温センサーが流体に直接接触しています。
これが巻線型のような非接触、SUSチューブを介して熱の受け渡しをしているタイプよりも敏感なセンサーを作れる要因なのですが、半導体製造工程では塩素のような腐食性ガスを使用することもあるのでセンサーの劣化が懸念されます。
更にMEMSの場合、ボディ側への熱の逃げを避けるために、シリコンダイヤフラム上にMEMS技術で形成している事もあるので、このダイヤフラムの腐食、もしくは逆に反応による異物堆積によるもんだいもあります。
また、半導体プロセスでは危険なホスフィンのような毒ガスや、シラン系の可燃性ガスも存在しますので、ダイヤフラムの下にある空間にそれらが入り込んでなかなか抜けない=つまり置換効率が悪し構造になることも好まれません。(毒ガスに限らず、ガスの置換効率は重要視されます。)

こういったMEMSの構造上と特徴から、半導体プロセスでは避けられてしまったという歴史がありました。
Decoとしては、前述の深堀りRIE=ボッシュ工法の微小流量酸素ラインの制御にMEMS型を使用している海外の装置メーカーは存在しているのも知っていますので、「シリコン半導体用のエッチャーで酸素の微小流量&高速流量制御が必要なラインだけでも使えたら面白いのになぁ。」と考えていました。
半導体製造装置設計に携わる方々からすると、何を言ってるんだ!とお𠮟りを受けそうですが、MFC屋の立場だとMEMSのMFCは巻線型ではどうしても対応できない高速応答という分野で、素晴らしい結果を出してくれているのは確かなので・・・

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第420話 MFCの応答性能 その2

巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して早くはない理由のお話です。
まずはおさらいで、熱移動を流量検出原理とする熱式流量計もセンサーが関節接触型の巻線型か?直接接触型のMEMS型か?で感度が異なるお話をしました。
 
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上図にありあますように、熱の移動でセンサーの抵抗値のバランスが傾いた差分をブリッジ回路で取り出すのが、熱式流量計の基本的な構成です。
その差分で得られる信号は相当微弱なものですので、それを後段で増幅したり、直線性を補正したりすることで0-5VDCといってリニアな流量信号へ加工している訳です。

微弱な信号であるが故に、それでも相対的に感度が良いというのはセンサーにとっては良いことづくめなのです。
まず利得が大きいので、SN比がより良い信号を得られます。
SN比は音響関係でよく使われる言葉ですが、シグナルノイズ比(Signal-to-Noise Ratio)の事です。
有効な信号成分(シグナル)と雑音(ノイズ)成分との量の比率のことですね。
シグナル中に含まれるノイズ量の比率を表し、この値が大きいほど信号の品質や機材の性能がよいことになります。

では、MFCの流量信号でノイズとは何でしょうか?
実は皆さんよくご存じのゼロドリフトのことです。
SN比がよい信号は、ゼロドリフトが相対的に少ない事になります。
巻線型センサーから取り出される信号はかなり微弱なので、その分後段での増幅を大きくしないといけません。
困ったことに、そうすることで自ずとノイズも増幅されてしまうのです。
つまりゼロドリフトの量も大きくなってしまうのですね。
ゼロの長期安定性の悪化はMFMやMFCの精度性能の維持に大きな悪影響を与えてしまうのです。

MEMS型の最も美味しいのは、直接流体に触れている事で、応答性が格段に速い事です。
これは巻線型では追いつけない領域です。
前回お話ししたお湯を素手で触るのと厚手のゴム手袋を着けて触るという例え話を思い出して頂ければ、納得いただけると思います。
この応答性の速さを評価して、深堀りRIE(Reactive Ion Etching)=ボッシュ工法の微小流量酸素ラインの制御にMEMS型を使用している装置もあるくらいです。(残念ながら最先端シリコン半導体用のエッチャーではありませんが・・・)
また、エアリークテスターのような微小な漏れ量を素早く完治したい用途は、以前は応答反応が速い差圧式が人気でしたが、最近ではMEMS型の熱式流量センサーを搭載したMFMが見直されたりしています。

こんな優れたMEMS型なのですが、前述のシリコン半導体製造ラインではあまり好かれていない状況で、これには理由があります。
直接流体と接触して測定するというMEMS型の特長が仇になる形なのです。

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真・MFC千夜一夜物語 第387話 流量制御バルブとアクチュエーター その7

マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関して再び解説していきましょう。
これからのMFCの流量制御バルブに今後求められるのは、高速応答と大差圧制御です。
高速化の需要は半導体製造装置で根強く、大差圧制御は高圧でガスをハンドリングするような一般工業分野で多いのです。

その内、高速化に関しては今までも都度解説してきましたが、MFCという流量制御システムとしてのパッケージで考えなくてはいけません。
極論するならば、MFCで流量センサーからの信号を設定信号と比較制御させて、更なる高速応答をさせるのは、すでに限界に来ているのです。
アクチュエーターをどれだけ速くしても、今のフォーマットでは画期的な高速化には至らない事は見えています。

故に一つの方法としては、流量センサーを高速化する事なのです。
MEMSタイプの直接流体に接触して熱の移動を測定する流量センサーを採用する、もしくは熱式以外の流量センサー、コリオリ式や圧力式を採用する事です。
実際一部の深掘りRIE装置等では熱式MEMSセンサータイプのMFCを酸素流量制御ラインで使用して成功している事例があります。
だが、半導体製造装置で使用するガスには、接触式のMEMSタイプセンサーを嫌う腐食性の強い材料があります。
具体的には下図で示すようなトラブルが懸念されます。
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現行の巻線タイプが長く使われている理由が、センサー部チューブ外周に設置される巻線が流体に非接触な事が評価されているからで、ガス種によってはMEMSセンサーへの置換が難しいと判断されています。

それ故にDecoはMFCのフィードバック制御を装置側から介入して停止させて、装置からダイレクトにMFCの流量制御バルブ開度を制御する事が可能なMFCを提案しています。
高速応答が必要な場合は、MFCの流量センサーは流量モニターに徹して、流量制御バルブを装置側で直接操作する。
逆に流量が安定してきたら、少々環境条件が変化しても自動追従するようにMFC側に流量制御のイニシアチブを渡す。
これは産業用イーサーネットが普及し、EtherCATのような高速ネットワークが構築できるようになった今だからこそ実現できる装置との親和性の高いMFCの新世代だとDecoは考えているのでした。

もう一つの課題が大差圧制御は次回お話ししましょう。

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真・MFC千夜一夜物語 第327話 MFCの応答性 その3

前回はマスフローコントローラー(MFCの応答性に関して、流量制御バルブの構成部品であるアクチュエーターが、ピエゾが?それともソレノイドか?は、MFCとしての応答性能を決める決定的な要素ではない事をお話ししました。

今回はセンサーを見てみましょう。

 

センサーで代表的なのは、皆さんも良く御存知の巻線型です。

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巻線式分流構造流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan

 

これに対して最近増えているのがチップ(MEMS)型です。

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MEMS式流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan

 

そして、古くからある熱線式風速計をルーツに持つインサーション方式になります。

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インサーション式流量センサーの一般例 出典:EZ-Japan

 

あくまで一般論で言わせて頂ければ、これらのセンサーの中で、応答性能で最も不利なのは、巻線型です。

なぜならば他の2種類のセンサーは、測定対象である流体に直接触れる事で流体の温度を測定しているのに対して、巻線型は細径のSUSチューブの外周にニクロム線を巻き付けている為に、直接流体には接触せず、SUSチューブを介して熱のやり取りを行っている分、不利だからです。

もちろんそれ故に腐食性流体に強く、半導体製造プロセスのような特殊ガスを使用することで成り立っている装置産業には無くてはならないものなのですが、流体への接触が可能な流体(例えば空気や窒素)に限っては、巻線型は応答性能では最初からディスアドバンテージを背負っていると言えるのです。

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MFCの応答性 出典:EZ-Japan

前回から使っているMFCの応答性能を構成するチャートで示すと、「熱の移動量を流量へ換算して流量信号として取り出す」という部分の流量センサーが担当する仕事が速ければ速いほど、MFCとしての応答性能は向上する事になります。

今までこの部位が巻線型のMFCを使っていたユーザーが、アクチュエーターはソレノイドのままで、センサーをMEMSモデルのMFCに変えてみた場合、非常に良好な応答制御性が得られて驚かれるパターンを何度もDecoは見てきています。

もし可能なら、試してみられると良いかと思いますよ。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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