【お知らせ】

今まで本ブログは、"EZ-Japan BLOG since 2017”と "真・MFC千夜一夜物語”@niftyココログ版の2つで同時連載進行を行って参りましたが、既に告知の通り2019/5/11をもって@niftyココログ版の方を終了させていただきました。こちらのブログ"EZ-Japan BLOG since 2017"版での連載は、変わらず続けて参りますので、どうか千夜一夜=1001話にたどり着く迄、宜しくお願い申し上げます。

 

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20196月号(5/25発売)では混合ガスをマスフローコントローラー(MFC)、マスフローメーター(MFM)で使用する際、そして混合ガスをMFCで作る場合の解説を行っています。

 

さて、本来13回で終わるつもりでした“マスフローでこのガスを使う時は注意しよう!”ですが、リクエストがあったので、もう少し続けますね。

 

液化ガス

半導体製造プロセスでは、常温で液体の材料を気化して使う事がありますが、それとは別に常温で気体であるけれど、冷却や圧縮することで液体になってしまうものを液化ガスと呼んでいます。
アンモニア、プロパン、ブタンなどが一般的ですが、半導体向けだと三フッ化ホウ素(Bcl3)、ジクロロシラン(SiH2cl2)、六フッ化タングステン(WF6)、三フッ化塩素(ClF3)等々ぞろぞろとそういったガスが出てきます。これらのガスを通常仕様のMFCで使用すると、ほぼ確実に流量制御バルブ、オリフィスで再液化してしまいます。その理由は、断熱膨張による冷却効果が生じる為です。

 

断熱膨張とは・・・

物体が外との熱の出入りなしにその体積を増した場合、断熱膨張を起こし温度が下がります。これは理想気体を断熱条件の下で準静的に変化させた時の圧力と体積の関係を示すポアゾンの法則によるものです。

 

実際にMFCのバルブで生じている現象を下図で見てみましょう。
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MFCの流量制御バルブには必ず絞り部分(オリフィス)があります。

流量を調整するには、1mm未満の狭いオリフィス(固定)とバルブアクチュエーターのリフト量(可変)の組み合わせを使用するのは、今までのブログ記事で何度かお話ししたかと思います。

この狭い空間を液化ガスが通過した際に、流速が急上昇し、断熱膨張を起こしているのです。

 

液化してしまうと、バルブを閉塞させてしまい、流量制御が不可能になってしまいます。

液化の兆候は、流量制御が不安定になるところから始まります。

設定信号(SV値)に対して流量信号(PV値)がふらふらつき始めてしまうのです。

そして、液化でオリフィスが塞がれ始めると、更に流路が狭まり流速が上がっていくので雪だるま式にガスは液化して、すぐ閉塞に至ります。

そうなるとMFCPV値はほとんどゼロになってしまいます。

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これは困った現象ですね?果たしてどう対処したらよいのでしょうか?
一番最初に試みるべきなのは、窒素パージです。
MFC二次側をベントへ切り替え、真空引きと窒素パージを繰り返すことで液体を廃除できれば、MFCは高い確率で機能復帰します。
ですが、MFCの内部構造は複雑で狭い流路が多いので、なかなか液体を排出することは難しいのです。

次に試すべきは設備的に可能ならばですが、一時的にMFCを昇温することです。
次回お話ししますが、液化ガス用のガスラインはヒーターで昇温できるようになっている構造の場合もあります。それを使うのも手なのですが、液種によっては閉鎖空間に残存した液体が昇温されることで再気化するだけではなく、反応してしまうとなると大変危険です。
なのであまりお勧めできるやり方ではありません。

Decoの若いころは、よくお客様が液化したMFCにドライヤーの温風を当てていた現場もありましたが、熱式のMFCのセンサーの方式によっては、センサーの破損を招きかねませんので危険です。

「液化ガスの特性をまず確認すること」
「バルブを閉め切って液体を封じ込めないこと」
「MFCの電源は遮断すること」


この3つが最低条件になります。

これで回復しても、どっかに液が残っていて同じことを繰り返す可能性も高いので、最終的にはMFCを交換しないといけなくなてしまいます。
生産を止めて交換作業を行う訳ですから、工程から見たら大ダメージですね。

では、そうならないように、MFCで液化を起こさないようするにはどうしたらよいのでしょうか?
このお話は次回に続きます。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan