今回は精度という言葉に関して解説します。
マスフローのカタログで一番使う割に、正確な意味を把握されていないのがこの精度という表記です。

JIS Z 8103 計測用語での定義では「測定結果の正確さと精密さを含めた、測定量の真の値との一致の度合い」となっています。
対応する英語表記は accuracy
正確さは「偏りの小さい程度」であり、精密さは「ばらつきの小さい程度」と定義されています。
それぞれの対応英語は trueness と precision
しかしながら、accuracyという単語の意味こそがマスフローで使われる「精度」に近く、産業技術総合研究所 計量標準管理センター 国際計量室HP用語集にある「測定量について測定された値と真の値との一致度」=accuracy of measurment が非常に近いと考えられます。

では、「測定された値と真の値との一致度」というフレーズにある“真の値”がどこにあるのでしょう?
それはマスフローメーカー各々にあって、各メーカーのキャリブレーションを行う基準器がそれなのです。
決してユーザーの持っている流量基準器ではありません。
重要な事は2点です。

まず、マスフローのスペックにある精度で謳われているのは、メーカーでキャリブレーションした際のメーカーの流量基準器と製品であるマスフローとの流量がどれくらい一致しているかということのみ、

次にユーザー環境でどういった流量基準と比較しても、そもそもの条件が異なるため、スペックにある精度の範囲で流量測定や制御が出来るわけではないということなのです。

なお、現在マスフローメーカーのカタログや仕様書では、精度の表示には±X%F.S.という表記と、最近では±X%R.D.(もしくはMFCの場合のみ ±X%S.P. *S.P.=Set Point)というものが用いられています。
この表示方法を混同している方が多いのですが、全く異なるものです。
下図を参照ください。

180115_01

%F.S.表記の基準になるのは、流量計、マスフローのフルスケール値に対する偏差を表します。
それに対して%R.D.(もしくは%S.P.)は読値(リーディングスケール)、つまり使用している流量値での偏差になります。
図にあるように後者の方がフルスケールよりも小さなレンジでの保証値は良いわけです。
±1%F.S.精度保証の流量計は、フルスケールの10%での精度も±1%F.S.です。
それはフルスケールの10%という実際の測定ポイントでの精度保証値に読み替えると、±10%R.D.となってしまうのです。
つまりフルスケールの1%で測定している場合、±1%F.S.精度保証の流量計は、最大で±100%R.D. つまり1ml/minの流量としたら、0~2ml/minの範囲内に値はありますよ!という事なのですね。

次回は、繰り返し性のお話をしましょう。

MFC豆知識 by EZ-Japan ”Deco”