EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

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真・MFC千夜一夜物語 第276話 マスフローでこのガスを使う時は注意しよう! その8

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 2019年4月号(3/25発売)ではマスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータに異物が混入した際のトラブルシュートを解説しています。


 Bronkhorst High-Tech B.V.(以下ブロンコスト)の MASS-STREAM D-6371は、圧力損失はわずか38.6kPa(d)で500L/min[N]のアンモニア流量制御ができる低圧損大流量MFCです。
なぜこのような低圧損で大流量制御が可能なのでしょうか?
それは流量センサー構造の差です。

 

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従来のマスフローの多くが図の上にあるような分流構造をとっています。

この方式では流れる流体の一部(数mL/min程度)を0.3~0.8mmφ程度のセンサー管側に流して熱移動を測定し、残りほとんどを分流素子(バイパス)に流しています。

その為、センサーと層流素子の分岐部分に抵抗=圧力損失を設けてやってセンサー管へ流体が常に流れる構造にしなくてはいけません。

また層流素子自体の抵抗もセンサー管と同径の細管の集合体であったり、エッチングで凸凹を付けた板を丸めたものであったり、焼結フィルターを使っているものもある為、流量が大きくなるにつれこの構造部のボリュームも大きくなり、圧力損失が大きくなるのはやむを得なかったのです。

ところがMASS-STREAMのセンサーは、スルーフロー構造という直接流体を測定するインサーションセンサータイプで、分流構造のない全量測定方式です。

整流の為のフィルターは入っていますが、比較すれば圧倒的に少ない抵抗で流体を流すことができます。

ガスに直接触れるヒーターと熱センサーはSUSU316のシースで保護されているのでアンモニアどころか塩化水素(もちろんドライガス状態のみ)の使用にも耐えるのです。

また、MFCの構成物で最も大きな圧損を産むバルブ部分に関しても、5000L/minクラスのKv値を持つMFC一体型バルブが準備されていますし、それ以上の大流量、低圧損要求にはKv値を最大6まで選べる別体型モーターバルブも用意できるのがこのマスフローの強みです。

モーターバルブはソレノイド式よりも応答性では、劣りますが、構造上圧力損失を非常に小さくできる利点があります。


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理論上ではこの組み合わせでKv値4.4のバルブを選んだ場合、F.S.1000L/min[N]レンジで比較しても、分流構造タイプのMFCの1/4程度の圧力損失で流体制御が可能なのです。
MASS-STREAMがEU圏、特に窒化炉メーカーの多いドイツでアンモニアの流量測定&制御用途で高く評価され採用されているのは、こういった他に無い特性を評価されてのことだそうです。

シール材に関しては、アンモニアに使用するマスフロー全てにいえることですが、一般的なエラストマー材であるバイトンは膨潤してしまうため使用不可です。
EPDMかNBRが推奨されます。
メタルシールが普及し、少し危なそうなガスはなんでもメタルシールにする傾向が最近顕著ですが、大流量メタルシールモデルは存在していませんし、そもそもメンテ性を考えればエラストマーシールで問題ないガスをわざわざメタルシールにする必要はないとDecoは考えます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

真・MFC千夜一夜物語 第275話 マスフローでこのガスを使う時は注意しよう! その7


もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20194月号(3/25発売)ではマスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータに異物が混入した際のトラブルシュートを解説しています。

 

アンモニア(NH3)

アンモニアは可燃性、有毒ガスですが、半導体製造装置、窒化炉、発電設備、脱硝装置、石油精製装置の防食、イオンエッチングプロセスなど各種工業用途で広く用いられています。

ボンベの色は白色と決められています。

アンモニアは20℃での蒸気圧が0.857MPaの液化ガスです。
液化ガスと通常ガスとの大きな差は、液化の字のごとく液化ガスボンベには圧縮した液体と化したアンモニアが封入されていて、それがボンベ内で気化したガスを供給する仕組みであることです。(下図)


第5図

 

  ボンベに充填された液体アンモニアが内部で気化して気体となった際に得られる圧力は、常温で0.8MPaあればいいところです。

しかも液体アンモニアの蒸発潜熱は1268 KJ/Kg0℃、1013hPa)も必要である為、アンモニアを大量にボンベから払い出そうとすると、ボンベが熱を奪われてしまい、急激に温度が下がることで、ガスの供給圧力を失ってしまうのです。
例えばアンモニアをMFC下流側に0.2MPaの背圧が立つ条件で500L/min[N]流量制御したい場合、通常のMFCだと最低でもMFCへの供給圧は0.5MPa程の圧力をとってやる必要があります。
MFC
での圧力損失=ΔP0.3MPa必要になります。
これはあくまでMFCの入口/出口部での差圧ですから、ボンベからチャンバーまでの配管経路にある他の配管部品、バルブやフィルター、そして配管の曲がり等により生じる圧力損失を考慮すると、アンモニアボンベからの供給圧はさらに高く維持しなくてはならなくなってしまいます。

供給圧を上げるには、液化ガスである限り温度を上げて蒸気圧を稼ぐしか術はありません。
手っ取り早い話、ボンベの温度を上げればいいのですが、高圧ガス保安法では可燃性ガスのボンベを火や電気で直接温める行為が禁じられているので、間接的な手法である湯煎しか方法はないのです。
案外、このことを知らずにアンモニアボンベを市販の非可燃性ガス専用ボンベーヒーター(マントルヒーターやシリコンラバーヒーター)を用いている現場があるかもしれませんが、法律の順守を意識して下さいね。
確かに湯煎は設備も大掛かりになり大変であり、そういった意味ではできるだけ低い圧力でアンモニアを供給したいのが本音です。

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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

ここで紹介するブロンコスト社のMFC MASS-STREAM D-6371は、先ほどの二次圧0.2MPaの条件に対して、なんと一次圧は0.2386MPa500L/min[N]のアンモニア流量制御ができる低圧損大流量MFCです。

MFCの圧力損失はわずか38.6kPa(d)
まさにアンモニアのような液化ガスを大流量制御するためにあるようなMFCです。

なぜこのMFCはこんなに低圧損で大流量制御が可能なのか?それは流量センサー構造の差です。

以前の記事でも取り上げたので記憶している方も多いかもしれませんが、MASS-STREAMシリーズの流量センサーは、インサーションタイプなのです。

詳しい解説は次回・・・


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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