EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

PI-MFC

真・MFC千夜一夜物語 第361話 流量と圧力制御は同時にはできませんよ! その2

「1台の機器に流量センサーと圧力センサーを搭載することは可能ですが、その両方で制御をすることはできませんよ。」というお話です。
なぜならばバルブをPID制御するに当たって、流量信号なのか?圧力信号なのか?どちらを優先するかを決めてやらないといけないからです。

「でも、PI-MFCは流量と圧力両方の信号を使って制御していますよね?」という反論を頂く事がありますが、違うのですね。
PI(Pressure Insensitive)-MFCの動作に関して、既出のこの図を見てください。
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PI-MFCはあくまで流量センサーからの信号と設定信号を比較して一致するように流量制御バルブを制御するMFCです。
ただ、急峻な圧力変動があったと圧力センサーが感知した時だけ、流量センサーからのフィードバック制御を停止する(もしくは制御を緩慢化させる)機能を追加しただけなのですね。

「では、圧力式MFCは?」というご質問もいただきます。
圧力式MFC(Decoは圧力式フローコントローラーとも呼称してます。)これも圧力センサーを用いてはいますが、圧力信号を流量制御に使っているのではなく、あくまで熱式流量センサーの代替として差圧式流量計(絞り式やラミナーフロー式)の原理で圧力値から流量を算出して流量信号として取り出すことで、流量制御バルブをPID制御しているだけです。
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圧力式フローコントローラー動作原理の一例

まずはPI-MFCや圧力式MFCという存在を正しく理解して使う事から始めましょうね。


5/3(火)の更新は連休中という事もあり、お休みさせて頂きます。
次回更新は5/10(火)の予定です。
宜しくお願いいたします。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan



真・MFC千夜一夜物語 第343話 MFCだって自動運転! その6 

マスフローコントローラー(MFC)PI(Pressure Insensitive)機能に関してお話ししています。
前回の最後でこう書きました。

>MFCメーカーは、個々の装置でどのような使われ方をしているか?どのような圧力変動が
どれくらいの幅と時間で生じているかを把握しているわけではありませんから・・・
>うむ?よく考えたら、MFCがどのような使われ方をしているか?を把握している人は、
>MFCメーカー以外にいるではありませんか?

そうです。
それはMFCをシステムに組み込んでお使いの“貴兄”です。
「えっ、そんなの知らないよ!急に自己責任にして、Decoさんは逃げる気のか!」と、お叱りを受けそうですが、よく考えてみて下さい。
装置のオペレーションをしている方々は、ガスシステムの中でのバルブの開閉やMFCの動作等まで御存知ではないでしょう。
でも、少なくともこのMFCの搭載されている装置を設計した方々はご存じのはずではないのでしょか?
急峻な圧力変動は天変地異のように、あり日突然起こるわけではありません。
装置のガスシステムで、MFCのライン切り替えという動作が行われた際に、大小の差はあれ起きる事です。
ならば、わざわざ圧力センサーをMFCに積んで、急峻な圧力変動かどうかをジャッジさせなくても、そのタイミングでMFCの“流量制御を一時停止してね”とサインを送ってもらえば済むようにすればどうでしょうか?

自動車の自動運転で状況判断してブレーキを踏むには、カメラや超音波センサーのような色んなセンサー情報が必要かと思いますが、それは必ずこのタイミングでブレーキを踏まなくてはいけないという状況ではなく、いつどこでイレギュラーが発生して危機回避しなくてはいけないからです。
でも、MFCのPI動作に関しては、装置のガスシステムが正常に動作している限りは、そういった突発事項への対応ではなく、ルーチンワークだと思うのです。
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それならば上図のように、ある”流量制御を一時停止!“を意味するコマンド=バルブホールドコマンドを装置側から受信した際に、MFCは通常制御モード=設定信号(SV)と流量センサーの流量信号(PV)を比較して、それらが一致するようにバルブ制御信号(MV)を常に可変させるモードから、MVを直前の値で保持するような動作モードに移行する仕組みでもよいのではないでしょうか?

「あれ?MFCの自動運転という話じゃなかったの?」という迷走気味な展開になってきましたね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第342話 MFCだって自動運転! その5  

MFCは車のように自動運転ができるか?というお話です。
内蔵した圧力センサーを使ってマスフローコントローラー(MFC)の上流側で急峻な圧力変動を検知して自動的にMFCに「SV=PVとするようにMV可変させる制御を中断させる」機能を搭載したPI-MFCに関して解説しています。
一次圧力変動影響を回避すべくMFCが自動でブレーキを踏む機能を持つMFCがPI-MFCなのです。

これはMFCの自動運転への進化と言ってもいいでしょう。
だが、現実にはMFCは難しい判断を迫られることになります。
どこが難しいかと言うと、「MFCの上流側で急峻な圧力変動を検知して」という部分です。
圧力変動の検知に関しては、そもそも圧力センサーは巻線型熱式流量センサーの10倍は余裕で早いセンサーなので問題はありません。
ここで問題になるのは検知する段階ではなく、判断する段階です。
「急峻な圧力変動」とは、誰が、どのように判断するのでしょうか?
誰が?はもちろんMFCです。
では、MFCはどのように判断すればいいのでしょうか?急峻な圧力変動と、急峻ではない圧力変動は、どう切り分けたらいいのでしょうか?
MFCの大前提は、温度、圧力が変化しても一定の流量で制御できるモジュールである筈です。
一次側で生じるあらゆる圧力変動に対して無反応なMFCというのは、あり得ません。


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一般的には、①圧力変動幅、どれだけの圧力が降下したか?と、②変動時間、どのくらいの時間続いたか?にそれぞれ閾値を設定して、それを超えた場合に、MFCはPI動作(=流量制御をホールド)を行う判断をします。
この2つの条件を満たした際に動作させるようにする条件を付けておくことで、急峻な圧力変動と判断ができるようになるのです。

従ってこの条件設定は非常に重要となります。
厳しい条件、つまりわずかな圧力変動幅や時間で動作させるようにしてしまうと、肝心の圧力が変動しても一定の流量制御ができるというMFCの利点を殺してしまいます。
かといって緩やかな条件にすると、圧力変動影響がどんどん出てしまって、PI-MFCの意味がありませんね?
難しいところです。

ましてMFCメーカーは、個々の装置でどのような使われ方をしているか?どのような圧力変動がどれくらいの幅と時間で生じているかを把握しているわけではありませんから・・・
うむ?よく考えたら、MFCがどのような使われ方をしているか?を把握している人は、MFCメーカー以外にいるではありませんか?

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


真・MFC千夜一夜物語 第341話 MFCだって自動運転! その4 

MFCは車のように自動運転ができるか?というお話です。
MFCが流量設定信号(SV)流量出力信号(PV) の状態で、バルブ全開待機状態にならないようにSVが2%未満で入力された際は、流量制御を打ち切り、バルブをフルクローズで待機するゼロシャット機能、オートシャットオフ機能のご説明をしました。

こういった機能は、MFCが暴走するからではなく、逆にSV=PVになるように流量制御をまじめにしようとするからこそ、生じるトラブルです。
今回お話しするPI-MFC(Pressure Insensitive MFC=圧力変動影響緩和型MFC) に関しても同じことが言えます。
PI-MFCも従来のMFCの流量制御、車で言うところの設定した速度と実際の速度が一致するようにエンジンの回転数を制御するオートクルーズでは、問題が起こるようなケースに対処するMFCなのです。
ガスボンベから供給されたガスが、その下流に1台だけMFCがあって流量制御しているのならいいのですが、が複数のラインに分岐して、各々のラインでMFCが流量制御をしている場合、MFC1が流量制御中にMFC2も動き始めた際に、図のような現象が発生します。
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急にMFC2側のバルブが開いた為に、ガスボンベからのレギュレーターが払い出す量が足らなくなる事で、MFC1の供給圧が下がってしまいます。
その結果、MFCへ流れ込む流量が減ってしまうとMFC内部ではPVがダウンして、PV<SVという現象が生じてしまいます。
MFCはPVがSVと一致するようバルブ制御信号(MV)を増やす=バルブを開いてしまうことで対応しようとするのです。
この制御自体は、MFCの自動制御として当たり前の動作を行っているのですが、この結果、MFCのPVのログにはスパイクが入り、流量低下による成膜やエッチング工程への影響や、もし実際に害が無視できるレベルだったとしても、流量波形に異常を検知した装置が警報を発報したり、インターロックがかかってしまったりするのです。
MFCとしては当たり前の流量制御を行っている事が、困った事態を引き起こしてしまうことになるのです。
本来この対策は下の図のように各ラインに調圧器(ラインレギュレーター)設けるか、もしくは上流にバッファーの役割を果たすタンクを設ける事で対応は可能なことはわかっていました。
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ところが各ラインに調圧器を設置するのもそれなりにコストがかかり、場所を占有してしまいます。「MFCを補う為なのだから、MFCメーカー側で何とかしなさい!」と、どなたかがおっしゃったのでしょうか?
お客様にそう言われたら、本当はMFCが悪い訳ではなくても、なんらかの対策を考えないといけませんよね。
そこで、圧力センサーを使ってMFCの上流側で急峻な圧力変動が生じた際は、自動的にMFCに「SV=PVとするようにMVを自動制御するのをやめろ!」と指示する機能を搭載したMFCがPI-MFCとして市場に提供されるようになったのです。
MFC側から考えてみると、何ともおかしな話なのですが、MFCに待ったをかける事ができる=ブレーキを踏む機能を持つMFCがPI-MFCなのです。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第338話 MFCだって自動運転! その1  

Decoの若い頃、免許を取ってかっこいい自動車を所有するのが、夢とはいかなくても、働き甲斐だった気がします。
"高回転で馬力の出るエンジンを積んだスポーツカーに乗りたいなぁ"と思ったものでした。
ところが、最近では自動車の付加価値はEVやハイブリット等のエコだったり、衝突回避から進化した自動運転だったりします。
Decoの頃の自動運転と言えば、高速でスピードをセットしたらアクセルを話しても、延々とその速度で走ってくれる“クルーズコントロール機能”がそれでしたが、今や進化して、前車との車間を安全にとり前が詰まったら、こちらも減速したり、ウインカーを出したら安全に追い越しまでできるらしいですね。
道路交通法の改正で「自動運行装置を使って車両を利用する行為」も運転行為に含められ、公道上で「レベル3」自動運転が実現するようになっています。

自動運転と言えば、我らがマスフローコントローラー(MFC)も自動運転しているんですよ!
「えっ!そうなの?レベルはどれくらい??」
と聞かれると・・・
実は先ほどお話ししたクルーズコントロールレベルなんです・・・
流したい流量を設定(SV)して、センサーが検知した流量(PV)がそれと一致するように、バルブ制御信号(MV)を制御しているだけなのです。
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 その後に出現したPI-MFC(Pressure Insensitive MFC=圧力変動影響緩和型MFC)は、従来のMFCのオートクルーズでは、問題が起こるようなケースの1つである一次側の圧力条件が変動した場合に、MFCの異常動作に対し、待ったをかける=ブレーキを踏む機能を持つMFCでした。
その為にMFCの一次側に圧力センサーを配置して、圧力変動を、その検知した傾き(と時間)で判断していたのです。
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つまり上流圧変動に限定したトラブル回避機能付きなMFCなのです。
うむ、自動運転には程遠いですが・・・
さて、MFCの行きつく先はもっと進化した自動運転なのでしょうか?それとも・・・

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan


EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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