EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

PID制御

真・MFC千夜一夜物語 第382話 流量制御バルブとアクチュエーター その2

マスフローコントローラー(以下MFC) の流量制御を司る流量制御バルブとそのアクチュエーターに関して再び解説していきましょう。
下図にMFCの流量制御の仕組みを示します。
 
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これは前回紹介した自動制御の構成と同じです。
流量センサー+調整計+自動制御バルブ=MFCという関係ですね?
MFCでは熱式流量センサーが検出器としての役割を果たし、そこからの測定値(Process Variable 以下PV)と外部から与えられた目標値(Set Variable 以下SV)とを比較し、その偏差を無くす為に、流量制御バルブの操作量(Manipulative Variable 以下MV)を決定する自動制御を行っているのです。
調整計での制御にはPID制御が用いられている事が多いです。
PID制御とは、P(Proportional=比例)制御、I(Integral=積分)制御、D(Derivative=微分)制御の各出力を加算合成したものです。
PID制御はフィードバック制御の1つで、非常に汎用性のある制御技術です。


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P制御とは、目標値と現在値との差に比例した操作量を調節する制御方式です。
ある範囲内のMVが、制御対象のPVの変化に応じて0~100%の間を連続的に変化させるように考えられた制御のことです。
通常、SVは帯の中心に置きます。
ON-OFF制御に比べて、ハンチングの小さい滑らかな制御が可能になります。
SVとPVの差が大きければ加速度を上げてSVに接近させるように制御し、PVに近くなると徐々に加速度を下げる制御を行います。
P制御の問題点は、PVがSVに近づくと、MVの伸びが鈍ってしまうことでした。
この為、SVに近い状態まで行ってPVが安定するのですが、永遠に「PV=SV値」にはならないのです。
このP制御における、PVとSVの差を偏差と表現します。
P制御ではSVに近づけることまでできるが、SVとの偏差を0にできません。
これではいつまでもSV=PVにはならないですね?
MFCでそれは困りものです。
100SCCM流量を設定したのに、ずーっと出力は98SCCMで安定してしまうMFCは使いにくいと思います。

この偏差をなくすために考えられたのが、積分動作(I動作)です。
I動作は偏差を時間的に蓄積し、蓄積量がある大きさになった所で、MVの操作量を増やして偏差を解消させるという動作をさせてくれます。
P動作にI動作を加えた制御をPI制御(比例・積分制御)と言い、一般的なMFCはこのPI動作で制御されいると言っていいです。
 
ただ、PI制御は偏差を蓄積する為にPVがSVに合致するのに時間が必要になります。
MFCのように周囲の配管機器とガス供給系を形成している場合は、それだと色々と難しい問題が起きてしまいます。
MFCの1次側で複数ラインを1つの調圧器(レギュレーター)で賄う場合、各ラインでのバルブ切り替えによる消費ライン数の増加に伴う一時的な払い出し量不足や、二次側の真空チャンバー排気量のゆらぎによる二次圧変動のような突発的に強い外乱が発生した場合、PI制御では偏差をある時間が経過した都度修正するので、元の値に戻るのに時間が掛かってしまうのが問題視されてしまいます。

それに対する改善策が外乱に対する微分動作(D動作)を加えたPID制御(比例・積分・微分制御)なのです。
でも、このPID制御ですら万全ではありません。
例えば図中にあるようにオーバーシュートを伴う急峻な波形を形成してしまうことで、二次側に容積の小さな真空チャンバーがあった場合に真空度を急激に悪化させたり、装置のインターロック(PVをモニターし、SVの一定許容範囲を超えた際にアラームを立てる機能)を作動させかねないのです。実はこれに対する局所的な解消方法が一次側圧力変動影響緩和機能であるPI(Pressure Insensitive)機能です。
PI制御と同じPIでも意味が異なるので注意してください。

このようにPは偏差の変化にただちに応じる為にMVを出す「即応追従」、Iは目標値と測定値の偏差を引き続き一致させるべくMVを出す「継続追従」、Dは偏差の変化率から将来の動きを予測してMVを出す「予見追従」を各々が担当しているので、その匙加減がPID制御の調整で一番重要な点なのです。
「過去(I)は余り振り返るな、未来(D)に期待し過ぎるな。」と、Decoはベテランの技術さんに教わった覚えがあります。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

NEXT FLOW METER ”ES-FLOW MkⅡ”

ブロンコスト・ジャパン(株)から超音波流量計ES-FLOWの仕様が一部変更のお知らせが来ています。
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ES-FLOWシリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

従来モデルのES-FLOW MkⅠ と 新バージョン MkⅡの大きな変更点は以下の通りです。

・最小流量レンジ:4...200 ml/min → 2...100 ml/min へ
・精度:±1% R ± 1 ml/min  → ±0.8% R ± ≤ 0.4 ml/min へ
・流体温度: -10 … 90 °C → -10 … 90 °C (ただしSIP時最大140°C)

・その他 MkⅡでは衛生規格:3-A対応(トリクランプフランジ付きの製品のみ)、3-A対応のエア駆動ダイヤフラムバルブGEMÜ 650と組み合わせ可

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ES-FLOWとGEMÜ 650と組み合わせ例 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

【ES-FLOW MkⅡの特長】
・超音波を使用して、小口径チューブ内で、高精度・高直線性・低圧力損失で、2...100 ~ 30...1500 ml/minの微小流量を測定するように設計されています。

・液体は、流体密度・温度・粘度とは無関係に高精度精度(±0.8% R ± ≤ 0.4 ml/min)で測定することができます。

・ゼロデッドボリュームのストレートセンサーチューブにより、流量計はセルフドレイン構造です。

・オービタルTIG(Tungsten Inert Gas)溶接は衛生的な接続を可能にしており、この機器は衛生的な用途にも使用頂けます。それ以外の御用途では、食い込み継手(SWLタイプ)を装備することも可能です。

・接液部はステンレススチール(SUS316L相当)です。

・外部保護等級は防塵防水規格IP67です。

・ユーザインタフェースは静電容量型タッチスクリーンであり、情報の読み取りと機器の操作のためのTFTディスプレイを備えています。

そしてここが他の超音波流量計には無い特長なのですが、ES-FLOWの標準搭載のPIDコントローラーを利用して、コントロールバルブまたはポンプでの本格的な流量制御や、GEMÜ 650のようなエア駆動ダイヤフラムバルブを接続してキレのいい連続液体供給も可能です。
 

バージョンアップでより微小流量域への対応可能になった超音波流量計ES-FLOW MkⅡ
興味を持たれた方は、EZ-Japan までお問い合わせください。

【MFCニュース】 by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第330話 MFCの応答性 その6

マスフローコントローラー(MFC)の応答性に関して、調整計での制御方法の解説を始めました。
比例動作を制御する
P制御では、流量設定信号(SV)に対して流量信号(PV)が近づくと、目標値にきわめて近い寄り添った状態で安定してしまう現象が起きてしまい、いつまでもSV=PVになってくれません。
そこで
PI制御で過去の偏差を時間的に蓄積し、蓄積量がある大きさになった所で、MVの操作量を増やして流量を増やし、偏差を解消させるという特別な動作をするのでした。

今回はPID制御です。

 

PID制御

 PI制御の弱点は偏差を蓄積する分、PVSVに合致するのに時間が必要になる点です。
MFC
のように周囲の配管機器とガス供給系を形成している場合は、色々と難しい問題が存在します。
例えばMFC1次側で複数ラインを1つの調圧器(レギュレーター)で賄う際に生じるのですが、バルブ切り替えによる消費ライン数の増加に伴う一時的な払い出し量不足や、二次側の真空チャンバー排気量のゆらぎによる二次圧変動のような突発的に強い外乱が発生した場合、PI制御では偏差をある時間が経過した都度修正するので、元の値に戻すために時間が掛かってしまい、それが問題視されてしまう事がありました。(下図:PI制御の場合) 

それに対する改善方法があるので、今回の解説の最後に紹介しますね。
それがPID制御(比例・積分・微分制御)です。

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しかしこのPID制御も万全ではありません。
むしろ図中の微分動作にあるようなオーバーシュートを伴う急峻な波形を形成してしまうことで、二次側にある真空チャンバーの真空度を一時的に悪化させたり、チャンバー内でパーティクルの巻き上げを起こす可能性があります。

本来それらを防ぐ為に装置のインターロック(PVをモニターし、SVの一定許容範囲を超えた際にアラームを立て、最悪ガス供給を断つ方向へ制御する。)を誤作動させる要件になりかねません。

MFCはよくPID制御されていると表記されますが、実際の動作ではPI制御が主であったりします。PID制御で使用するには、マスフローの流量センサーの主力である巻線型センサーの流量出力信号が決して速くはない事が挙げられます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第329話 MFCの応答性 その5

前回からマスフローコントローラー(MFC)の応答性に関して、調整計での制御方法の解説を始めました。
比例動作を制御する
P制御で、目標値と現在値との差に比例した操作量を調節する制御を行うと、ハンチングの小さい滑らかな制御が可能になります。
ただ、流量設定信号(
SV)に対して流量信号(PV)が近づくと、目標値にきわめて近い寄り添った状態で安定してしまう現象が起きてしまい、いつまでもSV=PVになってくれません。

 

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PI制御 

このままではMFCの設定信号通りには、流量が流れてくれないので困ります。

そこでPに加えて積分動作=I動作を用いたPI制御が用いられます。

 

P制御における問題点は、PVSVに近づくと、MVの伸びが鈍ってしまうことでした。

SVに近い状態でPVが安定はするが、永遠に「PV=SV値」にはならないのです。

このP制御における、PVSVの差を偏差と言います。

つまりP制御ではSVPVを近づけることまでできるが、SVPVとの偏差を0にできない」という問題があると言い換える事ができるのです。

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この偏差をなくすために考えられたのが、積分動作(I動作)です。
上図にあるようにI動作は偏差を時間的に蓄積し、蓄積量がある大きさになった所で、MVの操作量を増やして流量を増やし、偏差を解消させるという特別な動作をします。

 

このようにして、P動作にI動作を加えた制御をPI制御(比例・積分制御)と言い、一般的なMFCはこのPI動作で制御されいると言っていいのです。

 

「あれ?MFCの制御はPID動作じゃないの?」

とおっしゃる向きもあるかもしれませんね?
それに関しては、次でお話ししましょう。

 

あと、念のためですが、ここで説明したPI、最近はやりのPI-MFCPI=Pressure Insensitive、つまり圧力変動影響緩和型MFC)のPIとは全く別の意味ですから、ご用心ください。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

真・MFC千夜一夜物語 第328話 MFCの応答性 その4

前回はマスフローコントローラー(MFCの応答性に関して、同じ熱式流量センサーでも、巻線型とMEMS型、インサーション型の差を比較してみました。

今回は、MFCを構成する流量センサーと流量制御バルブを制御する調整計の機能に関してお話ししましょう。機器間の関わりは下図を参照ください。


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MFCが搭載している調整計は、流量センサーからの流量信号(PV)と外部機器からの流量設定信号(SV)を比較、判断して、流量制御バルブの制御信号(MV)を操作する仕事をしています。

 

MFCの調整計の用いる制御方法として、PID制御という言葉をよく聞きますね?
ですが、MFCにとってのPID制御という解説にはなかなか適切なものが無いのです。
PID
は大別すると、P動作:Proportional(比例動作) 、I動作:Integral(積分動作)、D動作:Differential(微分動作)のことです。
連載ではPPIPIDと順に制御を解説していきますね。

 

P制御

P制御とは、目標値と現在値との差に比例した操作量を調節する制御方式です。
ある範囲内のMVが、制御対象のPVの変化に応じて0100%の間を連続的に変化させるように考えられた制御のことです。
ON-OFF制御に比べて、ハンチングの小さい滑らかな制御が可能になります。
SV
PVの差が大きければ加速度を上げてSVに接近させ、PVに近くなると徐々に加速度を下げる制御を行います。
このP制御でうまく制御できると良いのですが、SVPVが近づくと問題が生じます。

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 操作量が小さくなりすぎた為に、これ以上細かく制御できない状態になってしまい、目標値にきわめて近い寄り添った状態で安定してしまう現象が起きるのです。
手動操作する場合は、その辺りを上手く微調整して、目標値ピッタリに合わせる事が可能なのですが、調節器を使って電気的にコントロールする場合、目標値との差(偏差)が小さくなりすぎると測定誤差の範囲内に収まってしまうために、これ以上追い込む制御が不可能になってしまうのです。

しかし、MFCではそれは困ります。
SV
がフルスケール100SCCMに対して98SCCMPVが安定した状態は、フルスケールに対して-2%の値で制御を良しとすることであり、通常のMFCに求められる流量制御の要求値からは大きく外れてしまいます。

 

これでは困るので、解決手段としてPI制御が登場します。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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