EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

EZ-Japanブログは、真・MFC千夜一夜物語という流体制御機器=マスフローコントローラ(MFC)の解説記事をメインに、闘病復帰体験、猫達との生活が主なコンテンツです

TIIS

真・MFC千夜一夜物語 第258話 マスフローに防爆仕様は存在するの? その5


もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 2018年9
月号(8/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータ(MFM)の流量校正に関する解説です。本ブログと併せてお読み頂けましたら、幸いです。

前回から引き続き、ブロンコスト・ハイテック(Bronkhorst High-Tech B.V. 以下ブロンコスト)の防爆用=危険場所用マスフロー(MFCとMFMの略語)のEX-FLOWシリーズの紹介です。

熱式流量センサーはその構造上、流体による熱の移動を捉える方式なので、防爆という観点では、その熱が危険であるという誤解が多かった歴史があります。
そもそもガスの流量測定を行うのは全体の中でセンサー管を通る微小な流体に対してであり、更に巻線方式のセンサーの場合は直接流体に接触はしていないので、懸念されるような問題はあり得ません。(下図)


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ただ、本質安全防爆構造の趣旨からいって、最小点火エネルギーを下回るエネルギーしか供給できない為に、EX-FLOWでは、24VDC 20mA以下の信号で電源供給と流量信号のやり取りを行っています。
流量出力は15~20 mA (線形)で端子台接続となり、本質安全防爆Ex ib ⅡCに対応した認証済みの本質安全回路への接続専用となります。
その為、次回以降で解説する非危険場所に設置する専用設計のバリア内蔵電源・信号変換器が必要になります。
 

EX-FLOWは、これと接続することで初めてMFMとして動作することになるのです。
つまりEX-FLOW自体は厳密にいうとMFMではなく流量発信器、マスフロートランスミッターなのですね。(聞きなれない言葉だと思うので、圧力センサーに置き換えて表現するならば、圧力トランスミッター的な存在と言えます。)
接続した信号変換器を用いて初めて4-20mAのアナログ信号へ変換することができるのです。

EX-FLOW MFMは流量範囲:0.16~8 ml/minという小流量レンジモデルから220~11,000 m3/h という大流量レンジモデル(いずもAir換算、Normal 0℃、1013hPa校正)まで対応し、圧力範囲:真空~40 MPaという今までのブロンコストの熱式マスフローラインナップのほぼすべての範囲を網羅しているので、幅広い用途に対応ができます。
(写真 大流量用ウエハータイプ EX-FLOW)

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【出典:ブロンコスト・ジャパン(株)】

これは本質安全防爆構造が、点火源である電気系に対する要求であり、その要求は基板が収まるヘッド部分に集中する為なのです。
つまり、その他の部分、ボディ構造、流路構成は従来モデルのそれがそのまま応用できるという利点があります。
耐圧容器に収めるタイプの耐圧防爆構造のマスフローよりも同じ仕様ならば小型であるだけでなく、流量・圧力のバリエーションに富み、かつコストが安いというメリットを提供できます。
耐圧防爆構造の場合、耐圧容器にかかるコストの割合がどうしても高いのです。


【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

真・MFC千夜一夜物語 第254話 マスフローに防爆仕様は存在するの? その1

 

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20187

月号(6/25発売)では、マスフローコントローラ(MFC)及びマスフローメータ(MFM)内部の分流構造が、流量の繰り返し性に対して及ぼす影響を解説していますので、本解説と合わせてお読みいただけたらと思います。

 

さて、今回から「防爆」仕様マスフロー(MFCMFMの総称)に関してお話ししましょう。

2017年に「ブロンコスト・ジャパン(株)、本質安全防爆構造MFMTIIS認証を取得!」というニュースがあり、本ブログでも何度か取り上げました。(下写真)


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<出典:ブロンコスト・ジャパン()

その後、訪問先や講習会、業界の方々との四方山話の中で、

「防爆仕様のマスフロー って、あったの?」

「そもそも本質安全とか耐圧防爆ってどういう意味?」

という質問を頂く回数が徐々に増えてきましたので、機は熟してきたのかな?と思い、今回から取り上げてみようかと思います。

 

機は熟してきたというのは・・・
実はこのリリースは、防爆に携わる人達にはインパクトがあるのですが、当然防爆自体に興味のない方は当然関心もないという、評価が真っ二つに分かれる性質のものでした。

筆者としてはマスフロー業界の10大ニュースどころか、トップ3に入るものだと思っています。

「オランダのメーカーが日本の本質安全防爆でTIISの認証を取った!」という事と、「熱式マスフローで国内本質安全防爆対応モデルは初!」である事がその理由です。

*ちなみに防爆構造のマスフロー自体は以前から(株)オーバルさんと東京計装(株)さんで提供されています。

TIISTechnology Institution of Industrial Safety)とは「公益社団法人産業安全技術協会」の事で、労働安全衛生法令で定める機械等の検定業務のほか、JISIECISOなどの基準による安全性能試験業務、また当協会安全性能認定審査基準による機械等の認定業務を行ってる機関です。
既にATEX IECEx本質安全防爆構造マスフローをラインナップに持つブロンコストですら、TIISの認証を得るのに数年間の時間を必要としたとのことですから、その難度がわかかりますね。
なぜブロンコストはこのような“ジャパンユニーク“と呼んで他の外資が避ける日本の防爆規格に挑戦したのでしょうか?
そこから見えてくる「国内防爆マーケットでの熱式マスフローの今後」を考えていきたいなと思いますので、お付き合いくださいね。

 

まず、次回から「防爆とは?」からご説明していきましょう。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

 

 

EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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