【お知らせ】

今まで本ブログは、"EZ-Japan BLOG since 2017”と "真・MFC千夜一夜物語”@niftyココログ版の2つで同時連載進行を行って参りましたが、既に告知の通り2019/5/11をもって@niftyココログ版の方を終了させていただく事になりました。(既に更新は4/23で終了しております。)

こちらのブログ"EZ-Japan BLOG since 2017"版での連載は、変わらず続けて参りますので、どうか千夜一夜=1001話にたどり着く迄、宜しくお願い申し上げます。

 

もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」誌 20195月号(4/25発売)ではブロンコスト(BronkhorstHigh-Tech B.V.のマスフローコントローラ(MFC)、マスフローメータ(MFM)の新製品(MEMS式コリオリ流量センサー他)をを紹介しています。

 

 

モノシランをマスフローで使う場合の注意事項 その2

モノシラン、そしてそれに準じる危険性を持つ特殊高圧ガスを使用するには細心の注意が必要です。
特にマスフロー(MFCMFMの総称)の配管作業時には、外部リークを発生させないように、細心の注意が必要です。

フェイスシールタイプ(VCR®UJR®等とメーカーで呼称)はメーカーの規定する“手締め+1/8回転”といういささか頼りない締め付けに不安になり、さらに締め付けようとするユーザーを何度か見てきました。

それによりビード部に傷をつけてしまい、却って外部リークが止まらず泣きを見る人が少なからずいます。
ビード部を損傷すれば、昨今のマスフローでこの種のオスネジを削り出しで加工している製品ならば、単純な継手交換だけでなく、フランジ又は本体ボディ交換というかなりコストと手間のかかるシャレにならない事態になってしまいます。
また、ガスケットの再利用は厳禁です。
メタルタイプフェイスシールは、いわゆるメタルシールと同じなので硬度こそ違いますが、ビード部とガスケット、つまり金属と金属が押し付けられてシールをしているのですから、一度使用したガスケットには傷がついてしまっているのです。

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Oリングシールタイプのフェイスシールタイプ継手、メーカーで呼称するところの”VCO”は、日本ではほとんど普及していませんが、非常に使い勝手のいい継手で、ヨーロッパでは結構使われています。
フェイスシールタイプのガスケットに当たるところが、樹脂製のOリングになっているのが特長です。
この場合は、メタルシールのような削り出しのものはほとんどなく、食い込み継手と同じくマスフローボディの直管ねじ(UNFやBSPP)に継手コネクターがねじ込まれて、Oリングでシールされていますので、前回のお話ししたのと同じく、マスフロー側の固定にも留意してください。

横着はせずにスパナ2本でしっかり固定と締め付けを行うべきです。


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マスフロー、特にMFCでのモノシランが反応して生成したSiO2でのセンサー詰まりは恐ろしい結果を産む可能性がある事は既に解説しました。
Deco
の経験ではシラン系ガス用のMFCが修理で返却されてくると、バルブオリフィスや層流素子に白い粉が詰まっていることがよくありました。
これはどこかに酸素と反応した生成物が発生するポイントがあるということです。
大まかに分類すれば、それがMFC下流側である場合は、二次側の継手とバルブ部分が、上流の場合は一次側の継手と層流素子に白い粉が付着しているます。(センサーも詰まっているはずですが、内径1mmに満たないチューブの中身を目視は難しいので、出荷時の圧損と比較して詰まりの有無を診断するしかないのです。)
もちろんMFC自身の外部リークによる可能性もあるのだが、このトラブルに関しては経験上、マスフロー以外の配管系にその発生源があったことが多かったですね。

センサーの流量出力が実流量よりダウンしてしまうと、MFCは設定値より多くガスを流し始めます。
装置側のビルドアップ(ROR)等で定期的にMFCの流量を検証して、流量制御状態を把握しておく必要があるのです。だが、このトラブルは異物の詰まりという外的要因の性質上、いきなり発生することもあり得ます。
そうなるとリアルタイムでの流量検証が重要とされ、MFCの流量をMFMでモニタリングするという手法もよく用いられました。
だがこのMFMと監視対象のMFCの動作原理が、ともに熱式で分流構造をとっている場合、同じように異物の混入影響が発生する可能性もあります。
同じ熱式でも分流構造のものと全量測定構造のものを組み合わせるなどの工夫が必要になってくるところですね。(全量測定のものに、メタルシールモデルは今のところありませんので、難しいところですが・・・)

 

半導体製造プロセスで使用される機会が多い特殊高圧ガスに関して、代表例としてモノシランを取り上げ、事故事例とマスフローで使用する上での注意事項を解説してきました。

人間にとって安全なガスは大気圧の空気だけです。
窒素や酸素ですら牙をむいてくるのです。
ましてや特殊高圧ガスは空気中に漏らしただけで発火したり、支燃材なしで分解爆発するガス、そしてアルシンのようにきわめて毒性が強く、微量のガスを短時間(LCL0 25ppm/30min)吸引しただけで命を落とすガスもあります。
できれば避けて通りたいようなガスばかりなのです。

職務や学業で携わる事になった方は、“特定高圧ガス取扱主任者 特殊高圧ガス“資格を取得されているかと思いますが、もし未取得ならば、是非取得をお勧めします。
 
特殊高圧ガス以外にも圧縮水素、圧縮天然ガス、液化酸素、液化アンモニア、LPガス、液化塩素と合計7種類に分かれていますので、詳細は高圧ガス保安教会まで問い合わせて下さいね。

 

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan