もう一つのMFC千夜一夜物語が掲載されている日本工業出版さんの「計測技術」  20192月号(1/25発売)では、デジタルマスフローのフィールドバスと2018年にはついにフィールドバスとのシェアを逆転したと言われる産業用イーサーネットへの対応を解説しています。

 さて、本物語のラスボスの一つ“CFの信憑性”との戦いは続いています。

それではいってみましょう。

 CFへのセンサー方式による影響

 これはある意味当たり前と言ってしまえば終わりなのですが、ユーザーサイドでは知られていない事ですので取り上げます。
下図にあるインサーションタイプの全量測定型熱式センサーを搭載するマスフローと、巻線式分流測定方式のものとはCF値は共有されない。
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アルゴンFS600SLMMFMとして、巻線式分流測定方式F-113AC-1M0とインサーションタイプ全量測定方式のMASS-STREAM D-6370の比較を行ってみました。
ソフトが両者で異なりますので比較し辛いかもしれませんが、F-113AC-1M0CF1.422100%FSに対して、D-6370CF2.017100%FSなのです。
この2種類に関しては確かに熱式流量センサーを搭載しており、原理は同じ熱式流量計と考えてよいのですが、センサー構造が全く異なることから、別のマスフローであると考えなくてはなりません。
インサーション方式は、熱式流量計という名称で国内外各社から販売されており、現場で混在して使用しているユーザーが、マスフローとして一からげにして巻線式分流測定方式のCFで流量換算をされていたのを見かけたことがありますので、取り上げてみました。

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 “マスフローのラスボスの一つ”というのは大げさではとおっしゃる向きもありますが、かってはほとんどのマスフローメーカーが流体種とCFを一対一で表記=シングルCFで運用してきたことの信憑性にかかわってくる内容なのです。
今回の記事で分かってきたように、CF1つで管理するのはかなり乱暴なことであり、複数のCFが存在することは認めなくてはいけません。
現在、多くのマスフローメーカーはCF表の公開をやめ、マルチガス・マルチレンジ マスフローに移行しています。
要はシングルCFの限界をユーザーから指摘され、実ガス流量保証という名のマルチCFへの移行を行っているのです。

マスフローを使用する上で、校正ガスである窒素(空気)と実ガスの相関は、決して流量式だけで算出できるものではありません。
温度、圧力、流量レンジとマスフローの分流構造といった膨大なファクターを踏まえて、実ガス流量に近づける努力をマスフローメーカーは行っている。
だが、あまりにも膨大な作業量が目の前には広がっており、問題はその解を得たところで、それが商業的な成功と結びつくのか?という経営サイドからの問いに対してどうするか?なのです。
「メーカーは製品の根幹にかかわる技術の蓄積と整備を蔑ろにしては、成り立たない。」筈なのに、昨今の日本メーカーの品質上の不祥事続きは、「目先の利益につながるか?どうか?」を優先しすぎたしっぺ返しではないでしょうか?

マスフロー業界として、CFというものを一度総括し、この先のマルチCFとしての標準化をどう進めていくのか?という指針を出していかなくてはならないとDecoは考えます。
オランダという人口では日本よりはるかに少ない国で、ガス種、圧力条件、温度条件、モデル構造別にCFデータベース作り上げ、製品の製造工程で運用するだけでなく、その成果を社内資産でとどめず、FLUIDATのようなWEB上のアプリで全世界のユーザーへ発信するブロンコスト社の姿勢は、日本のマスフロー業界は大いに参考とすべきなのではないでしょうか?
 既報の半導体製造ガス流量ワーキンググループ(SGF-WG)発足”の動き等、日本のマスフロー業界でもこの戦いへの参戦が始まりました。
この試みに関しても、可能な限り本ブログでご報告していきたいと思っています。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan