もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌の「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」という連載も2016年4月号(3/25発売)で連載22回を迎えさせて頂きました。
今回はMFC(マスフローコントローラー)の周辺機器に関する解説記事となっております。
本ブログと併せて、宜しくお願い致します。

さて、今回も圧力式MFC、Alicat社のラミナーフロー式(層流式)マスフローを御紹介しましょう。

Alicat社MFCの優れた点の一つに高速応答性能があげられます。
応答性能100m秒というのは、従来MFCの応答性基本スペックである1秒を遙かに上回るスペックです。
応答性能を重視したいプロセスでは歓迎されるでしょうね。
そもそも熱式流量センサーは、熱の伝達に時間を要する事から、本来高速流量制御には不向きです。
センシリオンのように直接流体に接触するタイプのチップ(MEMS)型センサータイプならば100m秒を切ってくる事が可能ですが、一般的な巻線型熱式流量センサーは流路の外壁側にヒーターと温度センサーを配置して、非接触計測を行っている関係で不利なので、難しいところです。
それに対して圧力センサーの応答性能は総じて熱センサーより上ですので、流量測定原理に熱ではなく圧力を捉まえるセンサーを使用するラミナフロー式は有利になります。
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大量生産を行うプロセスでは、巻線式MFCの応答性1秒というスペックを大幅に上回るスペックの流量制御器が登場すれば、スループットを飛躍的に改善できる工程が存在しており、こういったプロセスを抱える装置メーカー、エンドユーザーは、従来とは段違いの高速応答性能を流体制御機器(特に気体制御)に対するニーズとしてお持ちです。
メーカーに本当に必要な物は、「他者と同じで少し安い製品」を開発する事ではなく「今はどこも対応出来ないけど。本当はこんなモノがあればいいのに」という潜在的要求を具現化する製品を提供することにある筈ですよね?
そういった意味でAlicat社MFCにも期待をしてしまいます。

その2は、低差圧流量計測です。
差圧センサーが絶対圧センサーであることから、加圧条件だけではなく負圧下でも流量計測が行えます。
「Decoさん、そんなの熱式マスフローメーター(MFM)でも同じでしょ!」とおっしゃる方が居られるかもしれませんね。
ところが現実にデータを取ってもらうと、巻線型流量センサーと層流素子(バイパス)の組み合わせで構成された熱式MFMでは、大気圧以下の圧力領域でセンサーと層流素子の分流比が変化する事が原因で、流量計測に器差が発生する事があるのです。
それに対して、Alicat社MFMの場合、絶対圧センサーの分解能さえ問題無ければ、大気圧下の圧力条件での流量計測が可能です。
これもラミナーフロー式の利点ですね。
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Alicat社MFMの特筆すべき特長として、他にない超低差圧仕様が存在します。
必要最低差圧が6.9kPa(1PSI)!その名も”Whisper“と名付けられたこの製品に関して次回御紹介しましょう。
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*本記事作成に当たりAlicat社日本総代理店 日本スターテクノ(株) さんにお世話になりました。ありがとうございます。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan