章を改めて巻線型熱式流量センサーを搭載したマスフローメーター(MFM)の応答がマスフローコントローラー(MFC)のそれよりも決して早くはない理由のお話です。
流体に腐食性ガス、毒性、可燃性ガスが多い半導体製造分野では、やはり流体に非接触である巻線型流量センサーが好まれます。
しかし、流体に直接触れない巻線型は応答性の面で不利な方式です。
巻線型流量センサーを搭載したMFCはどうやって応答性能を向上させたのでしょうか?
前回のお話で、流量信号の応答性を良くする方法を検討しましたが、そもそも応答性能1秒以下などという仕様に到達できる程、熱の移動を捉える熱式流量センサーは速くはなりません。
そこで考えたのは、先に流量制御バルブを動かし始める方法でした。
どういう意味かというと、これは当然MFCに限られます。
MFCは入力された流量設定信号(以下S.V.)に基づき流量制御を行います。
原則的には流量信号(以下P.V.)とS.V.が一致するように、流量制御バルブを駆動する操作量(以下M.V.)
を可変させているのですが、P.V.が遅いという条件下ではこれをやっていては、高速流量制御はとてもできないですね?
を可変させているのですが、P.V.が遅いという条件下ではこれをやっていては、高速流量制御はとてもできないですね?
そこで応答時には少し工夫をします。
具体的にはM.V.の波形を補正するのです。
ここからはDecoの推測した方法です。
(必ずしも全てのMFCメーカーがやっている訳ではありませんし、メーカーにより色々なアプローチもありますので、あくまで一例です。)
“MFCはPID制御をしている”のが前提ですが、応答時は実はPIDでは制御せず、MVに予めSVを何分割(下図は仮に3分割 50/80/100)したステップを踏ませて立ち上がりを制御させます。
意図的に流量を流し始める事で実際の熱式流量センサー信号レベルでの立ち上がりよりも速く流量制御を高速でやってのけられるようにしているのです。
当然この芸当はMFMではできません。
だから巻線型熱式流量センサーを搭載したMFMの応答がMFCのそれよりも決して早くはないという現象が生じるのです。
これに関してはPIDシュミレータで同じような制御を行わせる為の波形も作ってもらって検証してありますので、興味を持たれた方は講習会などでDecoに聞いてみて頂いても結構ですよ。
【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan