EZ-Japan BLOG since 2017 真・MFC千夜一夜物語

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真・MFC千夜一夜物語 第482話 水素社会で脚光を浴びる防爆構造マスフロー その7

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
質量流量計の安全面での注目を浴びている防爆構造マスフローメーターの解説をしていきましょう。

「日本での防爆ニーズは高まっているのに、一向に防爆MFMやMFCが増えないはなぜですか?」という質問を頂くことがあります。
答えは簡単です。
既に解説してきましたが、「時間と費用の掛かる日本での防爆構造認証取得活動」が、やはりネックになっているのは否めないかと思います。
特に海外メーカーはATEXやIECExを持っているのにも関わらず、労働安全衛生法第42条により厚生労働大臣が定めた「電気機械器具防爆構造規格」を具備した防爆構造電気機械器具でなければ対応できないのです。
日本独自の防爆認証(JPEx)の取得がマストなのが海外メーカーの参入機会をスポイルしているとも言えるのではないでしょうか?
正直な話、今の日本市場の世界的な価値を考えると、ブロンコスト・ジャパン(株)のTIIS認証取得に掛けた熱意は、外資としては例外と考えた方がいいです。

ですが、ここにきて厚生労働省より労働安全衛生法第54条の2において準用する労働安全衛生法第46条第1項の規定にある外国登録型式検定機関で日本の防爆認証である型式検定合格証を発行できるようになったことで、状況は好転してきています。
IECExを持っていれば、試験報告書(ExTR)を登録型式検定機関に提出する事でJPExを取得しやすくなったのです。
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*国際電気標準会議(IEC)が制定した国際規格(IEC規格)に基づいて製造された防爆構造電気機械器具(防爆機器)が、電気機械器具防爆構造規格(昭和44年労働省告示第16号。)第5条の規定に基づき、防爆構造規格に適合するものと同等以上の防爆性能を有することを確認するための基準等について IEC規格の改正(IEC 60079-0:2017、IEC 60079-15:2017及びIEC 60079-28:2015)を踏まえ、新たな通達令和3年の基発0812第5号“電気機械器具防爆構造規格第5条の規定に基づき、防爆構造規格に適合するものと同等以上の防爆性能を有することを確認するための基準等について”が適用されているので参照ください。

安全は何よりも優先されるべきで、しっかりと規格を決める必要があるのはもちろんですが、それ故により高い安全性をもつ製品の国内開発や国際規格防爆構造品の参入を妨げるのは本末転倒です。
そういった意味で防爆に関しては、我が国はよい方向への舵取りがなされているとDecoは考えています。

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真・MFC千夜一夜物語 第481話 水素社会で脚光を浴びる防爆構造マスフロー その6

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。質量流量計の安全面での注目を浴びている防爆構造マスフローメーターの解説をしていきましょう。
 

第8図
出典:ブロンコスト・ジャパン(株)
ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech B.V.)mini CORI-FLOW Ex-d シリーズは、上図にあるように耐圧防爆ケース(Ex d box)にmini CORI-FLOWTMを収めたシンプルな構造です。
全ての電気配線は耐圧防爆ケースに直結された電気ハウジング部のネジ込み式のターミナルにより接続される形をとっています。
これにより爆発が生じた際も、その防爆ケース内に被害を留めることができるのです。
爆発が生じるエネルギーを送り込まないのが趣旨の本質安全防爆とは真逆の思想であり、その特性を活かして機器内部の結露や流体の凝固を防止するヒーターをオプションでケース内に備えることもでき、加熱温度を監視し制御するための外部制御ユニットも追加できます。
内蔵されるMFMは標準タイプのM12/M13/M14と同じ仕様で、3種で100 mg/h~30 kg/hの流量レンジをカバーし、ガス・液体の双方を測定可能です。(ただしガスは密度が小さい為、圧力条件で制限がありますが・・・)
最大使用圧力は、XM12/XM13が13.8MPa(A)、XM14が10.7MPa(A)です。

耐圧防爆構造マスフローの長所は、内蔵されるマスフローは通常仕様品である為、非防爆製品と性能面で見劣りがしない事です。
本質安全防爆構造品の場合、基板で使用する電流量を制限していること、非危険場所までの長距離伝送を伴う事から、通常製品より性能面でどうしても劣ってしまいます。
コリオリ式は熱式より高性能、高速応答を謳っているのですから、それをスポイルしての防爆対応は望まれてはいないかもしれないので、評価できる防爆構造かと思います。

逆に耐圧防爆構造製品のウィークポイントは、用意された耐圧防爆ボックスの形状により搭載できる機種に制限がかかることです。
本質安全防爆構造が電気部を流用して広い範囲の流量レンジに対応しているのに対して、mini CORI-FLOW Ex-d シリーズでは、mini CORI-FLOWシリーズにあるM15のようなさらに大きなレンジの製品がラインナップに入っていないことからもわかります。
また耐圧防爆構造の場合、耐圧容器にかかるコストから本質安全防爆構造よりも製品価格が高額になるのが弱点であると言えますし、耐圧容器はブロンコスト以外の専門メーカーの製品であり、納期がかかる可能性もあります。

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真・MFC千夜一夜物語 第480話 水素社会で脚光を浴びる防爆構造マスフロー その5

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。質量流量計の安全面での注目を浴びている防爆構造マスフローメーターの解説をしていきましょう。

今回は耐圧防爆構造MFMのお話になります。
ブロンコスト(Bronkhorst High-Tech.B.V.)の耐圧防爆型コリオリ式MFM mini CORI-FLOW Ex-dシリーズはJPExを取得した耐圧防爆構造コリオリ式MFMです。
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 mini CORI-FLOW Ex-dシリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

ご紹介してきたようにブロンコストのガス流量測定向け本質安全防爆構造EX-FLOWシリーズでは先んじてATEX/IECEx認証(Ex ib IIC T4 Gb)を取得しています。
ブロンコストのマスフローが守備範囲とする広い流量レンジほぼ全てを網羅できており、耐圧容器に収めるタイプの耐圧防爆構造のMFMよりも同仕様ならば小型であるだけでなく、流量・圧力のバリエーションに富み、かつコストが安いというメリットを提供できたるのです。

ここで更に世界中で大きな支持を得ている同社の微小流量コリオリ式マスフローへも本質安全防爆構造の電気回路部を流用して、コリオリ式マスフローの本質安全防爆モデルにも展開したいところ・・・なのですが、残念ながら熱式とコリオリ式ではセンサー構造が異なるため、電気系を共通設計にすることができません。
 
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上図にお馴染みの熱式センサーとコリオリ式のセンサーの一般例を示します。
熱式が流体固有の物性である定圧比熱に着目して、流体が奪う熱量を流量信号に変換するのに対して、コリオリ式は仮想回転系としての振動系を通過する流体の発生するコリオリ力でのチューブの捻じれの位相差を光ピックアップ等で検出することで流量信号に変換しています。
どう見てもこれは回路を共用できない別種の流量センサーであることがわかると思います。
せっかく構築した熱式流量センサー対応の防爆回路が応用できないが為に、熱式は防爆対応OKだがコリオリ式はNGという製品ラインナップになってしまいます。
でも、ブロンコストのラインナップにはコリオリ式での防爆対応マスフローは存在しているのです。
 
それがmini CORI-FLOW Ex-d シリーズです。
耐圧防爆ケース(Ex d box)にmini CORI-FLOWを収納した製品です。
爆発等級及び機器保護レベルはIEC Ex認証 (Ex d e IIB T6 Gb) 、およびATEX認証 (II 2 G Ex d e IIB T6 Gb)です。
このモデルでのJPExを取る形でブロンコストは動きました。
結果、DEKRA Certification B.V.にて、耐圧防爆構造(db) と 安全増防爆構造(ed) での防爆構造電気機械器具型式検定合格証を2019年10月30日付で取得できたのです。
発火度、爆発等級及び機器保護レベルは、国内防爆 (IIB T6 Gb)となります。

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真・MFC千夜一夜物語 第479話 水素社会で脚光を浴びる防爆構造マスフロー その4

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
質量流量計の安全面での注目を浴びている防爆構造マスフローメーターの解説をしていきましょう。

熱式流量センサーは流体による熱の移動を捉える方式であるが故に、防爆という観点では誤解が多かった歴史があります。
流体に熱を加えることのリスクを過剰に反応されていたのですね。
しかし、ガスの測定量はセンサー管を通る微小な流体に対してであり、更に巻線方式のセンサーの場合は直接流体に接触はしていないので、懸念されるような問題はあり得ないのです。

ただし、本質安全防爆構造の場合、その趣旨からいって最小点火エネルギーを下回る電力しか供給できない為に、本質安全防爆構造のマスフローは24VDC 20mA以下の信号で電源供給と流量信号のやり取りを行わなくてはいけません。
ブロンコストの本質防爆構造マスフロー EX-FLOWシリーズをベースにして説明していきましょう。
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EX-FLOWバリエーション 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

流量出力は15~20 mA (線形)で端子台接続となり、本質安全防爆Ex ibⅡCに対応した認証済みの本質安全回路への接続専用となります。
その為、非危険場所に設置する専用設計のバリア内蔵電源・信号変換器が供給されます。これと接続することで初めてMFMとして動作することになるのです。
つまりEX-FLOW自体は厳密にいうとMFMではなく流量発信器、マスフロートランスミッターなのです。(聞きなれない言葉だと思うのですが、圧力センサーに置き換えて表現するならば、圧力トランスミッター的な存在だとお考え下さい。)EX-FLOWを危険場所に、そして非危険場所にはバリアと信号変換器と電源で校正されたTSPM-003((株)タテヤマ製作所)のような機器とで本安ループを構成する事で、初めて4-20mAのアナログ信号へ変換して運用することができるのです。
 
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EX-FLOW 接続イメージ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

EX-FLOW のMFMモデルは流量範囲:0.16~8 ml/minという小流量レンジモデルから220~11,000 m3/h という大流量レンジモデル(いずもAir換算、Normal 0℃、1013hPa校正)まで対応し、圧力範囲:真空~40 MPaという今までのブロンコストの熱式マスフローラインナップのほぼすべてを網羅しているので、幅広い用途に対応ができます。
これは本質安全防爆構造が、点火源である電気系に対する要求であり、その要求は基板が収まるヘッド部分に集中する為なのです。
つまり、その他の部分、ボディ構造、流路構成は従来モデルのそれがそのまま応用できるという利点がEX-FLOWにはあるのです。(上の画像で同じ形状のヘッドパーツが使用されているのが確認できるかと思います。)

その為、耐圧容器に収めるタイプの耐圧防爆構造のマスフローよりも同仕様ならば小型であるだけでなく、流量・圧力のバリエーションに富み、かつコストが安いというメリットを提供できるのできます。 
現時点で韓国防爆規格KOSHA認証 KCs(Korean Certificate Safety) でEx ib IIC T4 も取得しており、こちらも着実に国内メーカーの韓国への輸出装置への搭載実績を増やしているそうです。

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真・MFC千夜一夜物語 第478話 水素社会で脚光を浴びる防爆構造マスフロー その3

本ブログでは質量流量計(熱式流量計、コリオリ式流量計)であり流量をアナログ信号やデジタル信号で出力するマスフローメーター(以下MFM)や、流量信号を基に流量制御を行うマスフローコントローラー(以下MFC)及びその応用技術での流体制御を紹介しています。
質量流量計の安全面での注目を浴びている防爆構造マスフローメーターの解説をしていきましょう。

ブロンコスト・ハイテック(Bronkhorst High-Tech B.V. 以下ブロンコスト)は多岐に渡る製品群を擁し、さまざまなマーケットにおいて革新的なソリューションを提供しています。IP40ラボラトリー型、IP65インダストリー環境型、半導体真空装置向け、分析装置向け等の幅広いラインアップで顧客の用途に合わせて造り込まれており、その中でも他社に無い特殊なラインアップとして、危険場所用の防爆構造マスフローのEX-FLOWシリーズが存在しています。

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本質安全防爆構造EX-FLOWシリーズ 出典:ブロンコスト・ジャパン(株)

EX-FLOWシリーズのMFMは危険場所でのガス流量測定向けの構造となっています。
本質安全防爆構造である熱式流量センサーと基板部は先んじてATEX/IECEx認証(Ex ib IIC T4 Gb)を取得し、更に2017年になってTIIS認証(Ex ib IIC T4)を取得しました。(労(平29年2月)検/検・第TC21584号) 
防爆に関しては、ブロンコストはオランダのメーカーである事から、当然ATEXを優先して取得しているのですが、これはATEXがEC指令 94/9/EC により、CEマーキング適合指令の一つとして、2003年7月より「強制(compulsory)」となった為です。
ATEXはフランス語の「Atmospheres Explosives」の意で、これまでのCEマーキング適合指令と同様に、これ以降は、EC加盟国域内で、製造、販売、流通、設置される爆発性雰囲気での使用を目的とした電気機器や災害防止システムは規制の対象となっています。
その為、現在EUでは、CEマーキングに関するATEX指令(新指令2014/34/EU 94/9/ECの型式試験証明書は引き続き有効)に適合し、指定された表示のつけられた製品でなければ取り扱いが一切できないのです。
 第4図

先程説明した危険場所に近い観念として、ATEXではゾーンとカテゴリーで区分けしています。
日本の防爆でいう危険場所の定義と、ほぼ同様す。
ブロンコストのATEXでのEC-Type試験番号KEMA 01ATEX1172, protection II 2G Ex ib IIC T4 Gbとなり、下図に示す内容となります。
第5図
(因みにGroup Ⅰの炭鉱用 は日本では“炭鉱防爆“として管轄省庁が経済産業省となり、前章で紹介した防爆=厚生労働省管轄の”工場防爆”とは別に存在しています。
こういうところが複雑な行政の枠組みですね。)
 このIECEx / ATEX指令防爆対応EX-FLOWを、日本の防爆仕様に対応させるべくTIISへ申請し、数年の時間と費用を費やして、TIIS認証(Ex ib IIC T4)を取得したそうです。
Decoもよく知っていますが、普通の海外MFCメーカーなら、日本にのみフォーカスした防爆認証に投資するという決断はなかなかできないもので、ブロンコスト・ジャパンのチャレンジは称賛されるべきだと思っています。

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EZ-Japan(イージージャパン)Deco こと 黒田です。 2014年6月開業です。流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”として情報発信しています。 日本工業出版「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載中です。
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